大坂なおみ選手が、全仏オープンで自身初となるベスト16入りを決めました。
これまで全豪オープン、全米オープンでは頂点に立ってきた大坂選手ですが、全仏オープンは決して簡単な大会ではありませんでした。理由はやはり、ローランギャロス特有の赤土です。ハードコートでは、強烈なサーブと一撃で主導権を奪うフォアハンドが最大の武器になります。しかしクレーコートでは、ボールが弾み、スピードが吸収され、相手にもう一球返されます。決まったと思ったボールが返ってくる。攻めたはずなのに、次の一球を無理な体勢で打たされる。そうした場面が増えるのが全仏です。
1回戦から3回戦までの経過
| ラウンド | 日付 | 対戦相手 | スコア | 試合時間 | ポイント |
|---|---|---|---|---|---|
| 1回戦 | 2026年5月26日 | ラウラ・ジーゲムント | 6-3、7-6(3) | 1時間55分 | 第2セットを先行されながらタイブレークで締め切った初戦 |
| 2回戦 | 2026年5月28日 | ドナ・ベキッチ | 7-6(1)、6-4 | 1時間50分 | 第1セットのタイブレークを7-1で圧倒し流れをつかんだ試合 |
| 3回戦 | 2026年5月30日 | イバ・ヨビッチ | 7-6(5)、6-7(3)、6-4 | 2時間58分 | 2度のタイブレークと最終セットを戦い抜いた全仏初ベスト16決定戦 |
今回の大坂選手の勝ち上がりを振り返ると、1回戦は5月26日にラウラ・ジーゲムント選手と対戦し、6-3、7-6(3)で勝利。第2セットは先にリードを許す苦しい展開もありましたが、最後はタイブレークで締め切りました。2回戦は5月28日にドナ・ベキッチ選手と対戦し、7-6(1)、6-4で勝利。特に第1セットのタイブレークを7-1で一気に取り切ったことで、試合の流れを大きく引き寄せました。そして3回戦は5月30日、18歳のイバ・ヨビッチ選手との対戦。第1セットを7-6(5)で取り、第2セットを6-7(3)で落とす苦しい展開になりましたが、最終セットを6-4で取り切り、2時間58分の接戦を制しました。
今回の大坂選手の勝ち上がりで印象的だったのは、ただ強打で押し切ったのではなく、苦しい時間帯を受け入れながら勝ち切ったことです。1回戦、2回戦、3回戦のすべてでタイブレークを経験し、特に3回戦は第1セット、第2セットともにタイブレーク。そこで1セットずつを分け合ったあと、最終セットを6-4で取り切りました。これは、単なる好調ではなく、クレーで戦うための我慢と修正力が見えた勝利だったと思います。
1回戦ジーゲムント戦:老獪なクレー巧者に崩されながらも押し切った初戦
1回戦の相手は、ドイツのラウラ・ジーゲムント選手。
ベテランで、クレーコートでの戦い方をよく知っている選手です。大坂選手のようにパワーで主導権を握りたいタイプにとって、ジーゲムント選手のような相手はとても嫌な存在です。速いボールをそのまま打ち返すだけではなく、スライスで低く沈めたり、角度をつけたり、テンポを外したりしてきます。
第1セットは大坂選手が6-3で取りました。サーブからの展開が安定し、深いリターンやフォアハンドで先にコートの中へ入る場面を作れていました。特に大事だったのは、相手の変化に付き合いすぎなかったことです。短いボールを無理に一発で決めにいくのではなく、まず深く返して相手を後ろに下げる。そこから次のボールでオープンコートを作る。強引なウィナーだけでなく、ポイントを組み立てる意識が見えました。
しかし、第2セットは苦しくなりました。ジーゲムント選手が緩急を増やし、大坂選手の打点を少しずつずらしてきました。クレーでよくあるのは、強く打っている側がいつの間にか焦らされる展開です。相手は拾っているだけに見えても、実際には打たせる位置を少しずつ悪くしている。大坂選手も、第2セットでは先にリードを許す場面がありました。
それでも6-6まで戻し、タイブレークではサーブと深いフォアハンドで流れを取り返しました。タイブレークで大事なのは、急に特別なことをしないことです。大坂選手は、ワイドサーブで相手を外に出し、次のフォアを逆方向へ打つ形、センターへのサーブでリターンを詰まらせて短くなったボールを前で打つ形を使いながら、最後は7-3で締めました。
ジュニアにとっても、相手が変化を使ってくる試合では、まず深さを保つこと、そしてタイブレークでは自分の一番得意なパターンに戻ることが大切です。相手のペースに巻き込まれそうになった時ほど、強く打つことより、深く返すこと、相手を後ろに下げること、次の一球を準備することが大事になります。
2回戦ベキッチ戦。第1セットのタイブレークで一気に主導権を奪った
2回戦の相手は、クロアチアのドナ・ベキッチ選手。パワーがあり、フラット系のショットでテンポよく攻めてくる選手です。クレーコートでも打ち切る力があり、大坂選手にとっては、単に粘れば勝てる相手ではありませんでした。この試合の最大のポイントは、第1セットのタイブレークです。スコアは7-6(1)、6-4。第1セットを落としていれば、試合の流れはかなり違っていたのではないかな、、と思っています。
第1セットは、互いに強いボールで主導権を取り合う展開でした。ベキッチ選手は深いリターンから大坂選手の足元にボールを集め、簡単に攻めさせないようにしてきました。大坂選手も、浅くなればベキッチ選手に先に叩かれるため、リスクを取りながら深いボールを打ち続ける必要がありました。
こういう試合では、1本のミスが流れを変えます。特にクレーでは、攻めているつもりでも相手に拾われ、次のボールで逆にカウンターを受けることがあります。大坂選手が良かったのは、苦しいラリーでもバック側にただ逃げるのではなく、要所でフォアの逆クロス、またはセンター深くへの強いボールを使って、相手に角度を作らせなかったことです。
タイブレークでは、大坂選手が一気にギアを上げました。サーブで先手を取り、ベキッチ選手に十分な体勢でリターンさせない。返ってきたボールに対しては、フォアでオープンコートへ展開する。特にタイブレークでは、ワイドに振った後の次球を空いたスペースへ打つ形が効いていました。7-1というスコアは、ただ相手が崩れたのではなく、大坂選手が最初の数ポイントでプレッシャーをかけ切ったのかなと。
第2セットも簡単ではありませんでしたが、第1セットを取っていたことで、ベキッチ選手は追いかける立場になりました。大坂選手はサービスゲームで主導権を保ち、浅くなったボールを逃さず前で打つことで、6-4で試合をまとめました。
ジュニアに置き換えると、この試合から学べるのは、タイブレークの入り方です。タイブレークは、なんとなく安全に入ると一気に受け身になります。かといって、最初から無理にライン際を狙う必要もありません。自分が一番ポイントを取りやすいサーブのコース、リターンの返す場所、3球目の狙いを決めておくこと。大坂選手の場合は、サーブから3球目のフォアで先に展開する形でした。
ジュニアでも、ファーストサーブを入れて相手のバックへ集める、リターンはまず深くセンターへ返す、チャンスボールだけ前に入るなど、自分なりの型を持っておくと、緊張した場面で迷いが減ります。試合の中で一番怖いのは、打つ前に迷うことです。迷いが出ると、スイングも小さくなり、ボールも浅くなります。だからこそ、タイブレークでは自分の得意な形に戻ることが大切です。
3回戦ヨビッチ戦:18歳の勢いに押されながら、サーブと前への意識で勝ち切った
3回戦の相手は、18歳のイバ・ヨビッチ選手。
若さと勢いがあり、ランキングも17位。すでにトップレベルの力を持つ選手です。若い選手の怖さは、迷わず振ってくることです。大坂選手の実績に引くのではなく、自分のボールを思い切って打ってくる。特にクレーでは、勢いのある選手がラリーに入ると、どんどんリズムに乗っていきます。
試合は7-6(5)、6-7(3)、6-4。第1セット、第2セットともにタイブレークとなり、最終セットまでもつれる2時間58分の接戦でした。第1セットから、ヨビッチ選手は大坂選手の強打に対して下がりすぎず、早いタイミングで返してきました。大坂選手がフォアで押し込んでも、ヨビッチ選手はクロスへ深く返し、そこから逆に角度をつける場面がありました。
大坂選手にとって苦しかったのは、決めにいったボールが一発で決まらず、次のボールをもう一度打たされる展開です。クレーで強打型の選手が苦戦する典型的な流れでもあります。それでも第1セットのタイブレークでは、大坂選手が大事な場面でサーブを入れ、リターン後の浅いボールをフォアでしっかり叩きました。7-5で第1セットを取ったことは、試合全体を考えて非常に大きかったと思います。
ただ、第2セットはヨビッチ選手が食らいつきました。大坂選手のショットミスが増え、特にラリーが長くなった場面で、先に仕掛けてミスになるポイントが出てきました。ヨビッチ選手は大坂選手のバック側に深く集め、甘くなったところでフォアに展開する形を増やしていました。大坂選手はサーブではポイントを取れていても、リターンゲームで相手を崩し切れない時間帯が続きました。第2セットのタイブレークは3-7。ここは、大坂選手が押し切るというより、ヨビッチ選手が落ち着いて深いボールを続け、大坂選手に先にリスクを取らせたセットだったと思います。
勝負を分けたのは最終セットです。第2セットを落とした直後は、流れだけ見ればヨビッチ選手に傾いていました。若い選手は、フルセットに入って勢いが増すことがあります。逆に実績ある選手は、ここで過去の苦手意識や疲労が出ることもあります。しかし大坂選手は、最終セットで落ち着いたプレーを見せました。
無理に早く決めようとせず、まずサーブで自分のサービスゲームを安定させる。リターンゲームでは、相手のセカンドサーブに対して前へ入り、深く返して次のボールで主導権を取る。特に印象的だったのは、ベースライン後方でただ打ち合うのではなく、チャンスが来た時にコートの中へ入る意識です。深いフォアでヨビッチ選手を下げ、返球が浅くなったところを逆クロス、またはオープンコートへ展開する。この形で少しずつヨビッチ選手の守備に負荷をかけました。
最終セット終盤は、サーブの価値がさらに大きくなりました。暑さもあり、3時間近い試合で脚も重くなる中、大坂選手はサービスゲームで簡単に崩れませんでした。ビッグサーブでフリーポイントを取る場面だけでなく、相手に攻め込まれないコースへ入れて、次の一球で主導権を握る場面がありました。最後は6-4。第2セットを落としても集中を切らさず、全仏で初めて3回戦の壁を破りました。
この試合は、ジュニアにもかなり参考になる内容だったと思います。相手の勢いに押される時間帯があっても、そこで全部を変えようとしない。まず自分のサービスゲームを守る。返せるボールを深く返す。浅くなった時だけ前に入る。こうした当たり前のことを、苦しい場面でできるかどうかが勝敗を分けます。
話題をさらった衣装
今大会の大坂選手は、プレーだけでなく衣装でも大きな注目を集めました。1回戦では、黒を基調にした華やかな入場用の装いから、金色に輝くウェアを見せるスタイルで登場しました。赤土のコートに黒とゴールドが映え、大坂選手らしい存在感のある姿だったと思います。
ここで凄いのが、衣装が派手だったかどうかではなく、大坂選手が自分らしさを隠さずにコートへ入っていることです。テニスは個人競技です。コートに立ったら、誰かが代わりにポイントを取ってくれるわけではありません。だからこそ、自分の気持ちをどう上げるか、自分をどう集中状態に持っていくかはとても大切です。
ジュニアでも、ウェアやラケット、シューズ、ルーティンで気持ちが変わる子は多いと思います。もちろん、相手への敬意や試合中の態度は前提です。ただ、自分が前向きになれる準備を持つことは悪いことではありません。大坂選手の衣装は、単なるファッションではなく、大舞台で自分を表現し、試合に入るためのスイッチのようにも見えました。
試合前に自分の気持ちを整える方法は、選手によって違います。静かに集中したい子もいれば、少し気持ちを高めた方が良い子もいます。大事なのは、周りと同じにすることではなく、自分が一番良い状態でコートに入る準備を持つことです。大坂選手の姿は、ジュニアにとっても、自分らしく戦うことの大切さを感じさせてくれます。
大坂なおみの試合からジュニアが学びたい5点
今回の3試合は、ジュニアにとってもかなり参考になる内容でした。
まず一つ目は、苦手な環境でも勝ち方は作れるということです。大坂選手にとってクレーは、最も得意なサーフェスではありません。それでも、サーブ、深いショット、タイブレークでの集中力、前に入る判断を組み合わせることで、勝ち上がりました。ジュニアでも、速いコートでは勝てるのに遅いコートでは勝てない、砂入り人工芝では勝てるのにハードでは合わない、ということがあります。でも、苦手なコートで負けるたびに避けていては、対応力は育ちません。苦手な環境こそ、自分のテニスを広げるチャンスです。
二つ目は、タイブレークは準備で変わるということです。大坂選手は1回戦、2回戦、3回戦でタイブレークを経験しました。1回戦は7-3、2回戦は7-1、3回戦は第1セットを7-5で取り、第2セットは3-7で落としました。ここから分かるのは、タイブレークは勢いだけではなく、入り方と型が大事だということです。ジュニアはタイブレークになると、急にミスを怖がって浅くなったり、逆に一発で決めようとしてミスをしたりします。大切なのは、普段から自分の得点パターンを持っておくことです。サーブから相手のバックへ集める。リターンはまず深くセンターに返す。長いラリーでは無理にラインを狙わず、相手を動かしてから前へ入る。こうした型があると、大事な場面でも判断がぶれにくくなります。
三つ目は、サーブを試合全体の軸にすることです。大坂選手のサーブはもちろん特別ですが、ジュニアが真似すべきなのはスピードだけではありません。大事なのは、大事な場面で相手に先に攻められないサーブを持つことです。ワイドに入れて相手を外へ出す。センターに入れてリターンを詰まらせる。セカンドサーブでも回転をかけて相手の打点をずらす。サーブ後の3球目まで考える。これができると、サービスゲームの安心感が大きく変わります。
四つ目は、若い相手や勢いのある相手に対して慌てないことです。3回戦のヨビッチ選手は18歳で、思い切りの良いボールを打ってきました。ジュニアの試合でも、年下の選手が勢いよく打ってきて、こちらが受け身になることがあります。そういう時に、相手の年齢や勢いに気を取られるのではなく、相手がどこでポイントを取っているのかを見ることが大切です。フォアで攻めてくるのか。バック側に集めてくるのか。短いボールに強いのか。長いラリーに強いのか。相手を年齢で見るのではなく、プレースタイルで見る。これはとても大事です。
五つ目は、自分らしくコートに立つことです。大坂選手の衣装はとても華やかでしたが、そこには自分を表現する強さがありました。ジュニアでも、好きなウェアやラケット、試合前のルーティンが気持ちを整えてくれることがあります。周りと同じである必要はありません。大切なのは、相手をリスペクトしながら、自分が前向きに戦える準備をすることです。
次戦ベスト8かけてサバレンカ戦へ。赤土でさらに大きな挑戦へ
大坂選手は4回戦で、世界トップクラスのパワーを持つ、現女王アリーナ・サバレンカ選手と対戦します。
ここからは、さらに一段レベルの高い戦いになります。サバレンカ選手は、サーブ、リターン、フォアの破壊力があり、少しでも浅くなると一気に攻め込んできます。大坂選手にとってはここまで1勝2敗、直近2戦は負けています。
自分のサーブゲームをどれだけ守れるか、リターンゲームでどれだけ相手のセカンドサーブに圧をかけられるかが大きなポイントになります。
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