ジュニアテニスの世界では、どのスクールに入るか、どんなコーチに教わるかが重要とされます。
実際、環境はとても大切ですし、指導者との相性が子どもの成長に大きく影響する場面も少なくありません。
ただ、小学生など小さなうちは、モチベーションを大事にしたいところで、ここに大きな影響を与えるのが、一緒に頑張れる友人の存在です。
テニスは二人いれば成立するスポーツです。コートさえあれば、ラリーもできますし、ポイント練習もできます。サーブ練習も試合形式もできる。つまり、日常的に一緒に練習できる相手が近くにいるだけで、練習環境は大きく変わります。
子どもは、大人が思っている以上に、誰とやるかで熱意が変わります。もちろん、将来を見据えてストイックに努力できる子もいますが、多くの小学生にとって、練習を続ける理由はもっと感覚的です。「あの子と練習したい」、「今日は負けたくない」、「また一緒に試合へ行きたい」などなど。
そういう気持ちが、結果として練習量や継続力につながっていきます。
三笘薫選手と田中碧選手の事例
この仲間の存在について考える時、真っ先に思い浮かぶのが、サッカー日本代表の三笘薫選手と田中碧選手です。
二人は、川崎フロンターレの下部組織で育ったことで有名ですが、その前段階である「さぎぬまSC」という地域のサッカースクール時代から一緒にプレーしていました。
母集団の巨大なサッカーでこのような事例は珍しい。しかも、単に同じスクールだったという話ではなく、幼少期から同じ地域で育ち、同じようにボールを追いかけ、競い合いながら成長していった関係です。そして最終的に、二人とも日本代表にまで上り詰めています。
もちろん、そこには本人の才能や努力、家族の支え、指導環境など、さまざまな要素があります。ただ、それでも「幼少期から近くに高いレベルで刺激し合える存在がいた」という点が多大な影響を与えていることは疑いないでしょう。
三笘選手はドリブルを武器にした個性型の選手で、田中選手はゲームメイクや戦術理解に優れたタイプ。プレースタイルは違いますが、お互いに高め合う関係だったことが伝わってきます。
ここから派生して、先週行われた2026年の選抜全国決勝で対戦した安居院兄弟にも同じことが言えるかもしれません。
また、関東でも思い当たる選手が実際にいます。
友人の存在は大きい
ジュニアテニスで小学生年代で強くなる子たちを見ると、近くに同じ温度感を持った友人がいるケースが多いです。
これはチーム単位だったり、個人間だったり。兄弟友人、その形は様々ですが、ある種のクラスター(似た意識を持った集合体)を形成してます。ここで大事なのは、圧倒的に強い相手ではなく、同じくらいのレベルで、お互い刺激を受け続けられる相手であることです。
実力差がありすぎると、どうしても関係が偏ります。
常に負け続ける側は苦しくなりますし、勝ち続ける側も刺激を受けにくい。でも、実力が近いと、毎回勝負になります。少年漫画の王道でもそうですね、キングダムで言う信と漂のような。
昨日は負けた。
今日は勝った。
来週またやろう。
この繰り返しが、自然に競争環境を作っていきます。
小学生の思考はシンプル
しかも、小学生は大人ほど将来のためという合理的な発想で動けません。未来のランキングや進学を考えて、毎日黙々と努力できる子は一部です。少なくとも、合理的な計画は保護者によってなされるはず。
個人で動いて強いご家庭は、ご両親に的確なマネジメントにより計画されていますが、小学生である子供はストイックに練習しているでしょうから、ここに何か頑張る理由、モチベーションの源泉が必要となります。
この点、試合に出ればだいたい勝てるというトップレベルの実力を維持することでモチベーションに繋げることが多いでしょうが、この場合の弱点は将来誰かに負けたり挫折した場合。親の誘導でやってきたテニスですから、勝てなくなると、ある日突然嫌いになってしまうリスクが高くなることです。
最大限努力してきたが、後発組に負けてしまったとき、モチベーションを保てるかどうか。
だからこそ、幼少期にあいつも頑張っているという友人の存在は、自立してテニスを続けるうえで、非常に大きな支えとなります。これは親がいくら言葉で説明しても、代替できない部分があります。
子供視点で変わる練習の位置づけ
友人の存在は、練習を義務ではなく日常や遊びの延長に変えてくれます。
遊ぶ場所が公園ではなくテニスコートになるような。
同じ価値観、似た実力の選手が二人いれば良質な練習が成立する点も非常に大きい。
例えば、近所に同じレベルの子がいて、気軽にコートを取って打てる環境があるとします。
それだけで、練習環境は一気に改善します。ここで大きいのはこのような場で自由な発想が生まれることです。
勝ちたい思いと楽しむ心が共生し、脳が活性化して新たな創造が生まれます。
スクールだけだと、週に数回かもしれません。でも友人同士なら、今日少しだけ打とう、が成立します。
自治体コートを使えば費用も安く、移動も少ない。送迎負担も軽くなります。
ジュニアテニスは、想像以上に調整コストが掛かるスポーツです。
遠いスクールへ通う。時間を合わせる。送迎する。試合へ行く。親の負担も大きい。
だからこそ、近場で自然に集まれる関係は本当に価値があります。
そのままダブルスにもつながっていくのも面白いですね。
ジュニアダブルスは、技術だけでは成立しません。お互いの性格を理解していることや、ミスした時の空気感、コミュニケーションの取りやすさなど、普段の関係性がかなり影響します。
日常的に一緒に練習している子同士は、その点が自然です。
差をつけてやろうという思考は不要
ジュニア期にはランキングや選抜など、比較を強いられる要素もたくさんあります。
都県で選抜される安藤財団の選抜や強化メンバーなど、その一つでしょう。ここで一人しか選ばれないということでモヤモヤしがちですが、小学生年代では、それらに一喜一憂しすぎないことも大切だと感じます。
理想は、小学生の間の都県1の称号などくれてやると思う思考。
このあたりを乗り越えるとまた強い。メンタルに強いという思考にも直結します。
なぜそうなるかというと、称号を目の前にした緊張が緩和されるからです。
少し先へ行くと本当に実感しますが、このあたりのタイトル云々は些細なことです。
上手くいけば褒めてあげればよいし、負けても気にしないことが肝要でしょう。
選ばれること自体は素晴らしいですし、経験として価値もありますが、それだけで未来が決まるわけではありませんし、短期的な思考で一喜一憂するより、実力を身に着けて、追い抜かれるより追い抜いていく位置づけの方が恐らく楽しい。
長く見れば、テニスを好きでいられるか、継続できるかが大事。
その意味で、一緒に頑張り、尊重し、高めあう友人の存在は、短期的な結果以上に大きな価値を持つことがあります。
関係維持と出口のケア
そして、最後に大切なのは、子どもだけでなく家族同士の関係です。
ジュニアスポーツでは、親同士の距離感が難しくなることもあります。戦績や進路、練習量など、どうしても比較が生まれやすい世界ですから、家族間でも自然体でいられる関係になると、本当に楽になります。
変に気を遣わず、過度に比較せず、必要以上に干渉しない。そういう空気感だと、子どもたちも伸び伸び続けられることが多いです。
結局、ジュニアテニスは短距離走ではなく長距離走です。
三笘選手と田中選手のように、近くで刺激し合いながら成長する関係を構築できると良いですね。
あとは、お互い高めあうのはいいですが、依存しすぎないように。
何らかのきっかけでお互いが離れてしまったり喧嘩してしまったりすることもありえます。ここでやる気を失うことがないように、複数のチャンネルを自然と持っておくのも良いでしょう。状況に応じてパートナーが変わっていくのも一期一会、子供にとって社会勉強でしょう。


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