水泳の様々なスポーツとの相乗効果:テニスと相性が良い理由を科学的に考える

テニジュで下記アンケートをさせて頂いた結果、テニスと併用する習い事で水泳は非常に人気であることがわかりました。

小学生までに経験したテニス以外のスポーツ(ジュニアテニス選手を対象)

かけっこ(陸上・短距離走)7.32%(3 votes)
水泳41.46%(17 votes)
野球0%(0 votes)
サッカー19.51%(8 votes)
体操21.95%(9 votes)
ダンス4.88%(2 votes)
バスケットボール4.88%(2 votes)


実際、水泳はテニスだけでなく、様々なスポーツの基礎体力を醸成する上で、幼児期から小学生にかえて、習い事全体での人気の定番です。

では、水泳は本当にテニスの体力づくりに役立つのでしょうか。
当然に、水泳だけでテニスが上手くなるわけではありません。ラケット操作、打点への入り方、相手のボールへの反応、スプリットステップ、横方向の切り返しなどは、やはりテニスの練習の中で身につける必要があります。

ただし、テニスを長く続けるための体の土台づくりという意味では、水泳はかなり相性の良い運動です。
心肺機能、全身持久力、呼吸のコントロール、体幹の安定、全身を連動させる感覚、関節への負担の少なさなどを考えると、特にジュニア期には取り入れる価値が高い習い事です。

今回、水泳の楽しさや技術向上のポイントを解説している実際のスイミングスクール、マナティスイミングに見解伺いながら記事を作成しました。詳しくは公式コラムをご参照ください。初心者の方へのアドバイスから、健康維持のための活用法、効率的な泳ぎ方のコツまで、泳ぐことがもっと好きになる情報が満載です。
参考:スイミングスクールの短期教室で比較する料金と効果

目次

テニスは見た目以上に体力を使うスポーツ

テニスは技術のスポーツという印象が強い競技で、もちろん、フォーム、打点、コース選択、戦術、メンタルはとても重要です。しかし実際の試合では、上に進むほどかなり高い体力が求められます。

テニスの試合は小学生のジュニアでも1時間を超えることが多く、将来的には5時間以上続くこともあり、その中で最大または最大に近い強度の運動と、中〜低強度の動きが繰り返されます。テニスは、短いダッシュだけのスポーツでも、ゆっくり長く動く持久系スポーツでもなく、強い動きと回復を何度も繰り返すスポーツです。

また、Pialouxらの若年テニス選手を対象にした研究では、テニスの試合中の平均酸素摂取量は最大酸素摂取量の46〜56%程度、平均心拍数は140〜160拍/分程度になると紹介されています。
同研究では13歳前後の競技テニス選手が高強度インターバルトレーニングを行った際、心拍数が最大心拍数の90%を超える水準に達したことも報告されています。これは、ジュニアテニスでも心肺機能がかなり重要であることを示しています。

試合中の子どもを見ていると、序盤はよく動けていたのに、後半になると足が止まる、打点への入りが遅れる、ボールとの距離感が合わなくなる、フォームが雑になる、判断が遅れるという場面があります。これは技術だけの問題ではなく、疲労によって体の動きや集中力が落ちている可能性があります。

つまり、テニスの上達には技術練習が欠かせませんが、その技術を試合の最後まで発揮するためには、体力の土台が必要です。その土台づくりの一つとして、水泳はかなり有効な選択肢になります。

水泳がテニスの体力づくりに向いている理由

心肺機能を高めやすい

水泳は、全身を使いながら呼吸をコントロールします。
陸上の運動では苦しくなったらすぐに呼吸できますが、水泳ではそうはいきません。クロールであれば、一定のリズムで顔を上げ、限られたタイミングで息を吸い、また水中で息を吐く必要があります。

この呼吸を制限された中で全身を動かすという点が、水泳の大きな特徴です。
Zarzecznyらの2022年の研究では、10歳前後の思春期前の男子40名を水泳群と対照群に分け、3年間にわたって心肺持久力を調べています。その結果、20mシャトルランの本数、最大速度、推定VO2maxなどの心肺持久力指標は、水泳群の方が全体として高かったと報告されています。研究では、3年間の追加的な水泳トレーニングが、身体発育を大きく妨げることなく、思春期前の男子の心肺持久力に良い影響を与えた可能性が示されています。

テニスの試合では、息が上がった状態でも次のポイントが始まります。サーブを打ち、リターンに反応し、左右に振られ、拾って、また戻る。この繰り返しの中で、回復力が弱い子はポイント間やゲーム間で十分に戻りきれず、試合後半にミスが増えやすくなります。

水泳で身につく心肺機能は、テニスの動きそのものではありません。しかし、息が上がった状態から回復する力、長い試合でも動き続ける力、疲れても集中を保つための土台にはなりやすいと考えられます。

呼吸機能への刺激がある

水泳は、呼吸機能という面でも特徴的です。水中では胸に水圧がかかり、呼吸のタイミングも制限されるため、呼吸筋や肺への刺激が陸上運動とは異なります。

Cochraneのレビューでは、安定した喘息を持つ子ども・青少年において、肺機能や心肺フィットネスを向上させる可能性があるとまとめられています。ただし、このレビューでも、水泳が他の運動より明確に優れているかまでは判断できないとされています。

ここで大切なのは、水泳をすれば誰でも肺が強くなると単純に言い切らないことです。
競泳レベルのトレーニング、一般的なスイミングスクール、喘息のある子への運動療法では、目的も強度も違います。ただ、呼吸を意識しながら全身運動を行う水泳は、ジュニア期の身体づくりにおいて、呼吸のリズムや息を整える感覚を学びやすい運動であることは確かです。

テニスでも、呼吸は意外と重要です。力んで息を止めて打つ子は、スイングが硬くなり、疲れやすくなります。ラリー中に自然に呼吸し、打つ瞬間に息を吐き、ポイント間で呼吸を整える力は、試合の落ち着きにもつながります。水泳で培われる呼吸のリズムは、直接フォームを良くするものではありませんが、スポーツ全般に必要な呼吸を乱さず動く感覚を育てる助けになります。

全身をバランスよく使える

テニスは片側動作が多いスポーツです。利き腕でラケットを持ち、フォアハンド、サーブ、スマッシュなどでは同じ方向への回旋動作を何度も繰り返します。両手バックハンドがあるとはいえ、競技特性として左右差は出やすいです。

一方、水泳は比較的左右対称に近い運動です。クロールでは肩甲骨、背中、体幹、股関節、脚のキックを連動させます。背泳ぎでは姿勢を保ちながら背面を使い、平泳ぎでは股関節や内ももを使い、バタフライでは体幹を大きく使います。泳法によって使う部位や動き方は異なりますが、どれも腕だけ、足だけではなく、全身を連動させる必要があります。

SinclairとRoscoeの2023年のシステマティックレビューでは、3〜11歳の子どもを対象に、水泳が基本的運動能力の発達にどのような影響を与えるかが検討されています。このレビューでは、対象となった10本の研究を整理し、水泳介入が基本的運動能力に前向きな影響を与える可能性があるとまとめられています。一方で、研究数が限られていることや、評価方法にばらつきがあることも課題として指摘されています。

ジュニア期の子どもにとって大事なのは、テニスに必要な動きだけを早く覚えることではありません。走る、跳ぶ、回る、支える、浮く、押す、引く、リズムを取るといった多様な動きを経験することが、将来の運動能力の土台になります。その点で、水泳はテニスとはまったく違う環境で体を使うため、運動の引き出しを増やす意味があります。

関節への衝撃が少ない

テニスは、足首、膝、股関節、腰への負担が大きいスポーツです。前後左右へのダッシュ、急停止、切り返し、踏み込み、ジャンプ、着地を何度も繰り返します。成長期の子どもでは、オスグッド、シーバー病、膝痛、足首痛、腰痛などが出ることもあります。

水泳は水中で行うため、陸上でのランニングやジャンプに比べると、関節への衝撃を抑えながら運動量を確保しやすい特徴があります。Kutznerらの2017年の研究では、水中運動中の股関節・膝関節の負荷を測定し、胸の高さまで水に入った状態では、陸上で同じ動きを行う場合に比べて関節負荷が36〜55%程度低下したと報告されています。研究対象は高齢者の人工関節例であり、そのまま子どもに当てはめることはできませんが、水の浮力が下肢への荷重を軽減するという基本的な特徴を示すデータとして参考になります。

もちろん、水泳にも負担はあります。競泳レベルで泳ぎ込む場合は肩への負荷が大きくなりますし、テニスでもサーブやスマッシュで肩を使うため、両方を本格的に行う場合は疲労管理が必要です。それでも、一般的なスイミングスクールに週1〜2回通う程度であれば、テニスとは違う形で体を動かしながら、比較的安全に体力を高められる可能性があります。

水泳がテニスに直接効く部分と、効きにくい部分

水泳はテニスの体力づくりに役立ちますが、万能ではありません。ここは誤解しない方が良い部分です。

水泳で伸ばしやすいのは、心肺持久力、全身持久力、呼吸のコントロール、体幹の安定、柔軟性、全身を連動させる感覚です。これらは、テニスの試合を最後まで戦うための土台になります。特に、試合後半でも足を動かす力、ポイント間で回復する力、疲れてもフォームを保つ力にはつながりやすいと考えられます。

一方で、テニス特有の一歩目の反応、スプリットステップ、横方向への切り返し、ボールとの距離感、打点への入り方、ラケット操作、相手の動きを読む力は、水泳だけでは身につきません。これらはコート上で、実際にボールを見て、動いて、打って、判断する中で養われます。

Kovacsのテニスの生理学に関するレビューでは、テニスにはスピード、敏捷性、パワーといった無酸素的な能力と、高い有酸素能力の両方が必要だと整理されています。また、競技テニスではワーク・レスト比が1:3〜1:5程度で、疲労が打球精度を大きく低下させることも示されています。

つまり、水泳は「テニスの代わり」ではなく「テニスを支える土台」です。水泳で基礎体力を作り、テニスで競技特異的な動きを磨く。この役割分担で考えると、両者の相性はかなり良いと思います。

オーバーユース障害を回避する

特に小学生年代では、テニスだけに絞りすぎず、いろいろな運動を経験することが大切です。最近はジュニアスポーツ全体で低年齢化が進み、小さい頃から一つの競技を本格的に行う子も増えています。もちろん、早くから競技に取り組むことで技術が伸びやすい面はあります。

ただし、早すぎる専門化には注意も必要です。American Academy of Pediatricsの2024年の臨床報告では、若年アスリートにおいて、トレーニング負荷と回復のバランスが崩れると、オーバーユース障害、オーバートレーニング、燃え尽きにつながる可能性があると説明されています。また、若年アスリートは少なくとも週1日の休養を確保し、特定のスポーツから年間2〜3か月離れる期間を持つことが推奨されています。

同じ報告では、若年アスリートのオーバーユース障害のリスク要因として、特定スポーツへの専門化が関係する可能性も指摘されています。特に、同じ動作を何度も繰り返す競技では、十分な回復がないまま同じ部位に負荷がかかり続けることが問題になります。

テニスは片側動作や反復動作が多い競技です。だからこそ、低学年から小学生年代では、水泳のように違う環境で違う動きを経験することに価値があります。テニスでは地面を蹴って動きますが、水泳では水に浮きながら進みます。テニスではボールに合わせて素早く反応しますが、水泳では一定のリズムで呼吸と動作を合わせます。どちらが良い悪いではなく、違う刺激が入ること自体が、子どもの運動経験を豊かにします。

テニスと水泳の目的と親和性

テニスと水泳を並行する場合、水泳に何を求めるかを家庭で整理しておくと続けやすくなります。競泳選手を目指すのか、泳力を身につけるのか、体力づくりとして通うのか、リフレッシュの場として続けるのかで、必要な頻度や向き合い方は変わります。

テニスの補助として考えるなら、水泳はテニスが強くなる近道というより、「疲れにくい体を作る」「全身をバランスよく使う」「呼吸を整える」「関節への衝撃を抑えながら運動量を確保する」という位置づけが良いでしょう。

一般的な小学生であれば、テニス週2〜3回、水泳週1回くらいでも十分意味はあります。体力があり、本人が楽しんでいるなら水泳週2回も選択肢になります。ただし、テニスの大会が増えたり、選手コースに入ったり、土日に試合が続いたりするようになると、疲労の管理がより重要になります。

特に成長期は、練習量を増やすことよりも、睡眠、食事、休養を確保することが大事です。水泳もテニスも頑張っているのに、寝不足で疲れが抜けず、学校生活にも影響が出ているなら、明らかにやりすぎです。習い事は、子どもの成長を助けるものであって、疲弊させるものであってはいけません。

水泳をやめるタイミング

小さい頃から水泳を続けている子でも、学年が上がるにつれてテニスの比重が大きくなり、水泳と距離を置く家庭も増えるでしょう。誰しもそのタイミングは訪れます。

低学年のうちは、水に慣れる、泳げるようになる、心肺機能を高める、全身を使う経験をするという意味で水泳の価値は大きいです。しかし、テニスの大会が増え、より専門的な練習が必要になってくると、時間の使い方を見直す必要があります。

そのときに大事なのは、「せっかく続けてきたからやめられない」と考えすぎないことです。水泳で得た体力や身体感覚は、決して無駄にはなりません。小さい頃に身につけた泳力や呼吸の感覚、全身を使う経験は、その後のテニスにも、他のスポーツにも、日常生活にも残ります。

むしろ、成長に合わせて習い事の比重を変えていくことは自然です。低学年ではテニスと水泳を並行し、高学年以降はテニスの頻度を増やす。大会が近い時期は水泳を休む。オフシーズンや体力づくりの時期に水泳を取り入れる。そうした柔軟な考え方で十分だと思います。

まとめ

水泳は、テニスの技術を直接伸ばす習い事ではありません。水泳をしているからといって、フォアハンドが上手くなるわけでも、試合の組み立てが良くなるわけでもありません。

しかし、心肺機能、呼吸のコントロール、全身持久力、体幹、左右バランス、全身を連動させる感覚、関節への負担を抑えた運動という意味では、ジュニアテニスとの相性はかなり良く、特に怪我防止に繋がる点は非常に大きい。

フィジカルを鍛える上で、どうしても陸上であれば足を使います。これが疲労骨折などに繋がりますが、必要なフィジカル向上を維持した上で、このリスクを軽減できます。

科学的に見ても、水泳トレーニングが子どもの心肺持久力に良い影響を与える可能性や、基本的運動能力の発達にプラスになる可能性は報告されています。一方で、水泳だけでテニス特有の敏捷性やラケット操作が身につくわけではないため、水泳は土台、テニスは競技特有の技術と動きと分けて考えることが大切です。

また、小学生年代では、テニスだけに偏りすぎず、いろいろな運動を経験することが将来の伸びにつながることがあります。これは欧米では主流の考え方であり、テニスを頑張る子にとって、水泳は遠回りに見えて、実は長くスポーツを続けるための良い土台づくりになるかもしれません。

「疲れにくい体を作る」「最後まで動ける体を作る」「全身をバランスよく使える体を作る」。
こう考えると、ジュニア期の「テニス+水泳」は、かなり理にかなった組み合わせだと言えるでしょう。

参考文献

Fernandez, J., Mendez-Villanueva, A., & Pluim, B. M. “Intensity of tennis match play.” British Journal of Sports Medicine, 40(5), 387–391, 2006. DOI: 10.1136/bjsm.2005.023168
テニスは1時間以上続くことも多く、最大または最大に近い強度の運動と、中〜低強度の活動を繰り返す

Kovacs, M. S. “Tennis Physiology: Training the Competitive Athlete.” Sports Medicine, 37, 189–198, 2007. DOI: 10.2165/00007256-200737030-00001
競技テニスにはスピード、敏捷性、パワーといった無酸素的能力に加え、高い有酸素能力も必要であり、疲労が打球精度を低下させる

Pialoux, V., Genevois, C., Capoen, A., Forbes, S. C., Thomas, J., & Rogowski, I. “Playing vs. Nonplaying Aerobic Training in Tennis: Physiological and Performance Outcomes.” PLOS ONE, 10(3), e0122718, 2015. DOI: 10.1371/journal.pone.0122718
13歳前後の競技ジュニア選手を対象に、テニス型HIITと非テニス型HIITを比較した研究

Zarzeczny, R., Kuberski, M., & Suliga, E. “The Effect of Three-Year Swim Training on Cardio-Respiratory Fitness and Selected Somatic Features of Prepubertal Boys.” International Journal of Environmental Research and Public Health, 19(12), 7125, 2022. DOI: 10.3390/ijerph19127125
10歳前後の思春期前男子を3年間追跡し、水泳群は対照群より20mシャトルラン、最大速度、推定VO2maxなどの心肺持久力指標が高かった

Sinclair, L., & Roscoe, C. M. P. “The Impact of Swimming on Fundamental Movement Skill Development in Children (3–11 Years): A Systematic Literature Review.” Children, 10(8), 1411, 2023. DOI: 10.3390/children10081411
3〜11歳の子どもを対象に、水泳が基本的運動能力の発達に与える影響を整理したシステマティックレビュー

Beggs, S., Foong, Y. C., Le, H. C. T., Noor, D., Wood-Baker, R., & Walters, J. A. E. “Swimming training for asthma in children and adolescents aged 18 years and under.” Cochrane Database of Systematic Reviews, 2021, Issue 11, CD009607. DOI: 10.1002/14651858.CD009607.pub2
喘息を持つ子ども・青少年を対象に、水泳トレーニングが肺機能や身体フィットネスを改善する可能性を示したレビュー

Brenner, J. S., Watson, A., & Council on Sports Medicine and Fitness. “Overuse Injuries, Overtraining, and Burnout in Young Athletes.” Pediatrics, 153(2), e2023065129, 2024. DOI: 10.1542/peds.2023-065129
若年アスリートでは、トレーニング負荷と回復のバランスが崩れると、オーバーユース障害、オーバートレーニング、燃え尽きにつながる可能性がある

Kutzner, I., Richter, A., Gordt, K., Dymke, J., Damm, P., Duda, G. N., et al. “Does aquatic exercise reduce hip and knee joint loading? In vivo load measurements with instrumented implants.” PLOS ONE, 12(3), e0171972, 2017. DOI: 10.1371/journal.pone.0171972
水中運動では、陸上と比べて股関節・膝関節への負荷が36〜55%程度低下したと報告されています。ただし対象は人工関節を持つ成人ですので、水の浮力により関節への衝撃を抑えやすいという一般的説明の補助根拠として解釈ください

WOWOW
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次