近年、夏のジュニアテニスの大会は、昼間の酷暑を避けた夕方の開催が目立ちます。
この傾向は小学生ジュニア界隈では概ね好意的に受け止められているようですが、このような時差開催はごく一部でほとんどは昼間に実施されています。
夏のジュニアテニスで一番注意したいのが、熱中症です。
特に屋外コートでは、気温だけでなく、湿度、直射日光、照り返し、風の弱さが重なることで、体の中に熱がこもりやすくなります。テニスは走る、止まる、打つ、また構えるという動作を何度も繰り返すスポーツなので、見た目以上に体内で多くの熱が作られます。
熱中症は暑い日に水を飲まなかったから起きるものと思われがちですが、実際にはもう少し複雑です。体内で発生する熱、汗による放熱、湿度による汗の蒸発しにくさ、塩分不足、睡眠不足、暑さへの慣れなどが重なって起こります。厚生労働省も、熱中症を「高温多湿な環境に長くいることで、体内の水分や塩分のバランスが崩れ、体温調節機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態」と説明しています。
ジュニア選手の場合、大人よりも自分の体調変化をうまく伝えられないことがあります。「まだ大丈夫」「試合中だから言いにくい」と我慢してしまう子もいます。そのため、夏のテニスでは、本人の気合いや根性に任せるのではなく、科学的な仕組みと客観的な基準を使って予防することが大切です。
熱中症の原因
熱中症の大きな原因は、体内で作られる熱を外へ逃がしきれなくなることです。人間の体は、筋肉を動かすと熱を作ります。テニスでは、ラリー、フットワーク、サーブ、ダッシュ、切り返しを繰り返すため、練習中も試合中も体温が上がりやすくなります。
体温を下げる主な仕組みは汗です。ただし、汗は「出ること」だけで体を冷やすわけではありません。汗が皮膚の表面から蒸発するときに熱を奪うことで、体温が下がります。つまり、湿度が高い日は汗が蒸発しにくくなり、同じように汗をかいていても体が冷えにくくなります。
日本スポーツ協会は、熱中症予防の温度指標としてWBGTを示しています。WBGTは、気温だけでなく、湿度、輻射熱、気流の影響を含めた暑さの指標です。屋外で日射がある場合のWBGTは、湿球温度、黒球温度、乾球温度をもとに算出され、特に湿度の影響が大きく反映されます。
ジュニアテニスで危険なのは、「気温だけを見て大丈夫と判断してしまうこと」です。気温が30℃前後でも、湿度が高く、風が弱く、ハードコートの照り返しが強い日は、体にとってかなり厳しい環境になります。逆に、同じ気温でも湿度が低く風がある日は、汗が蒸発しやすく、体温を下げやすくなります。
熱中症のリスクを高める要因を整理すると、次のようになります。
| 要因 | 体に起こること | テニスで注意したい場面 |
|---|---|---|
| 高温 | 体温が上がりやすくなる | 真夏の日中練習、午後の試合 |
| 高湿度 | 汗が蒸発しにくくなる | 梅雨明け、雨上がり、無風の日 |
| 直射日光・照り返し | 体表面に熱が加わる | ハードコート、日陰の少ない会場 |
| 水分不足 | 血液量が減り、放熱しにくくなる | 長時間練習、試合待機後の再開 |
| 塩分不足 | 筋けいれんや体調不良につながる | 大量発汗、足がつる、頭痛 |
| 睡眠不足・疲労 | 体温調節が乱れやすくなる | 遠征翌日、連戦、朝早い試合 |
熱中症は「汗をかいているから大丈夫」ではない
夏のテニスでは、汗をたくさんかいている子を見ると「しっかり汗が出ているから大丈夫」と思ってしまうことがあります。しかし、科学的に見ると大事なのは汗の量だけではありません。汗が蒸発して熱を逃がせているか、水分と塩分を補えているか、体温が上がりすぎていないかが重要です。
汗をかき続けると、水分と同時にナトリウムなどの電解質も失われます。水だけを大量に飲んでも、塩分が不足したままだと体調が戻りにくいことがあります。厚生労働省も、のどの渇きを感じなくても、こまめに水分・塩分、必要に応じて経口補水液などを補給することを示しています。
また、熱中症の初期症状は、テニスのプレーにも現れます。足が動かない、反応が遅い、サーブのトスが乱れる、単純なミスが急に増える、表情がぼんやりする、返事が遅い。このような変化は、単なる集中力不足ではなく、体温上昇や脱水のサインかもしれません。
テニス中止の境界ガイドライン
夏の練習や試合では、気温だけで判断するのではなく、WBGTを基準にすることが大切です。環境省の暑さ指数では、WBGTが28以上31未満で「激しい運動は中止」、31以上で「運動は原則中止」とされています。環境省のWBGTは予測値・実況推定値であり、実際のコート環境とは差が出る場合がありますが、練習や試合の判断材料として非常に重要です。
| WBGT | 暑さの目安 | ジュニアテニスでの判断 |
|---|---|---|
| 21未満 | ほぼ安全 | 通常練習は可能。ただし水分補給は必ず行う |
| 21以上25未満 | 注意 | 休憩と水分補給を意識する |
| 25以上28未満 | 警戒 | 長いラリー、連続ダッシュ、球出しの本数を調整する |
| 28以上31未満 | 厳重警戒 | 激しい運動は中止の目安。練習時間短縮・強度低下を基本にする |
| 31以上 | 危険 | 運動は原則中止。ジュニアでは中止・延期を基本に考える |
日本テニス協会の公式トーナメント向け熱中症予防ガイドラインでは、WBGT30.1℃以上でヒートルールの適用、32.2℃以上でプレーの一時的中止を検討する運用が示されています。これは大会運営上の基準として参考になりますが、家庭やスクールの通常練習で「32.2℃までは大丈夫」と考えるのは危険です。
ジュニアの普段の練習では、公式大会より安全側に判断した方がよいと思います。特に小学生や中学生では、WBGT28℃を超えたら練習内容をかなり軽くし、WBGT31℃以上では中止・延期・屋内トレーニングへの切り替えを基本にするくらいでちょうどよいです。
夏場は「今日の練習をやり切ること」よりも、「明日も元気に練習できること」の方が大切です。暑さの中で無理をして体調を崩すと、その日の練習効果どころか、数日間プレーできなくなることもあります。
熱中症を防ぐ食べ物
熱中症対策というと、どうしても水分補給や冷却グッズに目が行きます。しかし、ジュニア選手の場合、食事もかなり重要です。朝食を抜いた状態で練習や試合に入ると、体内の水分、塩分、糖質が不足したままスタートすることになります。
特にテニスでは、糖質が不足すると集中力や動きのキレが落ちます。塩分が不足すると、足がつる、頭痛、だるさなどにつながることがあります。たんぱく質は直接の熱中症予防というより、練習後の回復や体づくりに関係します。
| 食べ物・飲み物 | 役割 | テニス前後での使い方 |
|---|---|---|
| おにぎり | 糖質と塩分を補いやすい | 試合前、試合間の補食に使いやすい |
| 味噌汁・スープ | 水分と塩分を同時に取れる | 朝食に加えると夏場の準備に向く |
| バナナ | 糖質とカリウムを補いやすい | 試合間や練習前の軽い補食に向く |
| 梅干し | 塩分補給に使いやすい | おにぎりに入れると取り入れやすい |
| 果物 | 水分と糖質を補いやすい | 暑くて食欲が落ちる日の補食に向く |
| ヨーグルト | 水分とたんぱく質を少し補える | 朝食や練習後の回復補助に使いやすい |
| 牛乳・豆乳 | 水分、糖質、たんぱく質を補える | 練習後の回復食として使いやすい |
| スポーツドリンク | 水分、糖質、電解質を補える | 長時間練習や大量発汗時に活用しやすい |
熱中症を防ぐ食べ物というと、何か特別な食品を探したくなりますが、基本はシンプルです。朝から水分、塩分、糖質を不足させないことです。
試合の日の朝であれば、おにぎり、味噌汁、卵、果物、ヨーグルトのような組み合わせが現実的です。暑さで食欲が落ちる子でも、おにぎりを小さめにする、バナナを使う、スープや味噌汁を加えるなど、食べやすい形にすると続けやすくなります。
一方で、試合直前に脂っこいものを多く食べると、胃に残って動きにくくなることがあります。揚げ物、こってりした肉料理、大量の菓子パンなどは、試合直前よりも試合後や前日の食事に回した方が無難です。夏の試合当日は、消化しやすい糖質、適度な塩分、少量のたんぱく質を意識すると、体への負担を抑えやすくなります。
熱中症を防ぐ方法
熱中症を防ぐ方法は、大きく分けると「暑さを測る」「練習強度を下げる」「休憩を増やす」「水分・塩分を補う」「体を冷やす」の5つです。
まず、練習前にWBGTを確認します。環境省の暑さ指数サイトでは、全国の暑さ指数の実況値や予測値を確認できます。ただし、環境省の数値は地点ごとの推計値や実測値であり、実際のテニスコート、特にハードコート上ではさらに暑く感じることがあります。できればコート上でWBGT計を使い、実際の環境を確認するのが理想です。
次に、暑さに合わせて練習メニューを変えます。危ないのは、真夏でも春や秋と同じメニューをそのまま行うことです。ラリー時間を短くする、球出しの本数を減らす、ダッシュ系を減らす、説明を日陰で行う、休憩を15〜20分ごとに入れる、シングルスよりダブルス形式を増やすなど、体に熱がこもりすぎない工夫が必要です。
水分補給は、のどが渇いてからでは遅いことがあります。練習前から少しずつ飲み、練習中も決まったタイミングで飲む習慣を作ります。大量に汗をかく日や2時間以上の練習では、水だけでなく、スポーツドリンクや塩分を含む補給も考えます。ただし、短時間・低強度の練習で毎回糖分の多い飲料ばかりにする必要はありません。基本は水、暑さが強い日や長時間練習では電解質も含める、という考え方が現実的です。
さらに、暑熱順化も大切です。暑熱順化とは、体を少しずつ暑さに慣らすことです。急に真夏の強度で練習すると、汗をかく能力や体温調節が追いつきません。梅雨明け直後、遠征先が普段より暑い地域、久しぶりの屋外練習では、いつも以上に慎重に強度を上げる必要があります。
熱中症を防ぐグッズ
グッズは、熱中症対策の中心ではなく補助です。一番大切なのは、中止判断、練習強度の調整、休憩、水分・塩分補給です。そのうえで、Amazonなどで買いやすい実用品をそろえておくと、夏の試合会場や練習でかなり助かります。
| グッズ | 目的 |
|---|---|
| タニタ 黒球式熱中症指数計 | 暑さを客観的に判断する |
| サーモス 水筒 真空断熱スポーツジャグ 2L | 水分切れを防ぐ |
| ザムスト(ZAMST) アイスバッグ 首用 | 休憩中に体を冷やす |
| コールマン(Coleman)クーラボックス | 飲料・氷・冷却具を保冷する |
| アミノバイタル 味の素 BCAA | 水分・糖質・電解質補給 |
| 経口補水液 OS-1 オーエスワンゼリー | 脱水が疑われる場面の補水補助 |
| アイスタオル 接触冷感 NOMAW | 首元や顔まわりの冷却 |
| ザムスト(ZAMST) COOL SHADER ポンチョ | 直射日光を減らす・大人気 |
熱中症対策グッズで特に優先度が高いのは、WBGT計、大容量の水筒またはジャグ、氷のう、クーラーボックスです。WBGT計は、コーチや保護者が「今日は危ない」と判断するための客観的な材料になります。気温だけでは分からない湿度や輻射熱の影響を考えるうえで、かなり役立ちます。
氷のうは、首、脇の下、足の付け根などを冷やすときに使いやすいです。太い血管が通る場所を冷やすことで、体表面から熱を逃がしやすくなります。チェンジコートや練習の休憩中に、手のひらに冷たいペットボトルや氷のうを当てる方法も取り入れやすいです。
スポーツドリンク粉末は、遠征や大会で便利です。ペットボトル飲料を大量に持っていくより軽く、現地で水に溶かせます。ただし、スポーツドリンクは糖質も含むため、低強度・短時間の練習で常に大量に飲む必要はありません。大量発汗、長時間練習、試合が続く日などに使い分けるのがよいです。
経口補水液は、普段のスポーツドリンク代わりに毎回飲むものではなく、脱水が疑われるときの補水補助として考えます。厚生労働省も、熱中症予防として水分・塩分や経口補水液などの補給を示していますが、体調が悪い、自力で飲めない、意識がはっきりしない場合は、補水よりも先に涼しい場所への移動、体の冷却、救急対応が優先です。
迷ったら、、ZAMSTかなと思います。
夏のテニス会場で、大人子供問わず常時見かけますね。
水に濡らして被っておけば、上半身を冷やして保護できます。


コメント