小学生(U12)世代は、身長・筋力が急速に伸びていく大切な時期です。
テニスの競技力に直結する要素として、技術や体格だけでなく「ラケットの適合性」が大きな影響を与えます。特に全国大会を狙うトップ層では、早い段階で自分に合う適切なラケットを使うことで フォーム習得固定、成長速度、故障リスクの低減、が変わり、試合での安定感に繋がっていきます。
27インチ(大人用)への移行タイミング
下図は身長と比較した一般的な移行タイミングです。
但し、ネットでよく挙がっている一般ジュニアと選手層はタイミングが異なりますので、選手層の平均的な移行目安を記載しました。
区分 | 長さ | 対象年齢・身長の目安(一般) | 対象年齢・身長の目安(選手) | 特徴 |
---|---|---|---|---|
ジュニアラケット | 19~26インチ | 19〜23インチ:未就学〜小学校低学年(身長〜120cm) 25インチ:小学校中学年(身長〜140cm) 26インチ:小学校高学年(身長〜150cm) | 140cm前後で26インチ、その後成長に合わせて27インチへ移行。 255g→270g→280gと順を追ってステップアップできる。 | 身長・腕の長さに合わせた短め設計。軽量でスイングしやすい。 グリップも細く、小さな手にフィット。 |
大人用(ライトモデル) | 27インチ(標準長) | 一般成人向け。 ただし 26インチを卒業した小学生高学年も使い始める。 | 小学生の上位選手層はほぼ全て27インチで、270g~285g帯に落ち着く。 | 長さは大人用と同じだが、重量を軽量化(270〜285g)。 スペックは大人用と共通で、成長後も継続して使える。 |
データに基づく人気傾向
実際の人気ラケットを議論する際に欠かせないのが「使用率」のデータです。
2022年にテニスクラシックが「全国選抜ジュニア」で行った調査によれば、U12男子ではバボラとヨネックスの使用率が過半数を占め、次点としてプリンス・ウィルソン・ヘッドが続くという結果が示されました。
私は毎年有明の全日本を見に行ってますので、ラケットの使用比率は納得です。
2025年はこの記事のこともあり、全日本ジュニアの凡そ半分は確認できました。
因みに、この議論の前提で知っておかないといけないのは、上位層の一部は既にラケットを支給、貸与されていて決まっている点です。これはメーカーの戦略でもありますが、大きな大会、インスタ、人脈などで目立った存在は早期に色がついてきます。特に最初に認めてくれたメーカーというのは嬉しいもので、ジュニアは継続して使用する傾向にあります。よって、今後も上記使用率は大きく変わらないとみています。
あと、上手な子が使っているテニスラケットのジュニア間の伝搬は凄まじく早く、均一化しやすい傾向があります。
練習見学中の保護者間の話題もラケットが多いですからね。
また、ショップ販売ランキングも参考に、ここで紹介しています。ジュニアではライトモデルや270〜285g帯のラケットが常に上位を占めています。私はウィンザーのyoutubeのランキングが好きなのですが、ジュニア層(ライト)に限定して要約すると、やはりヨネックスとバボラが一番ですね。2025年はピュアドライブが年明け、EZONEが春に新作が出ましたが、100Lは実店舗でも最近まで売り切れが目立ちました。
これらのデータを基盤に、今回は 「人気順+特徴解説」 という形で各ブランドの代表的モデルを紹介していきます。
ジュニア選手(U12まで)の人気ラケット比較・徹底解説
バボラ(Babolat)
世界的に人気の高いブランドで、ジュニア層でも圧倒的な存在感を誇るのがバボラです。
U12層では「ピュアドライブ」「ピュアアエロ」「ピュアストライク」の各シリーズにライトモデルが揃っており、ピュアドライブにはさらにスーパーライトがあり、26から移行しやすい体制も整っています。
大会会場を見渡すと、男女ともにバボラを使用する割合は非常に高く、トップ層からビギナー層まで幅広い層に選ばれています。TOMAS CUP やルネサンスカップなど、全国規模のJOP大会でも積極的に協賛しており、若い世代の早期獲得に力を入れているのも特徴です。
人気の流れは、2年ほど前はピュアアエロ、昨年ピュアストライクの新作が出て、今年はピュアドライブの新作。
そして私見が入ってしまいますが、直近のアルカラスのネット際のドロップショットがあまりに鮮烈でしたので、スピンに定評あるピュアアエロが増える可能性もあると考えています。
ピュアドライブ Lite / Super Lite
バボラを代表する黄金スペックである「ピュアドライブ」は、U12ジュニアでも扱える軽量版が用意されています。ジュニアモデルでも男の子用・女の子用でカラーを分けて販売していることから、ブランド戦略の巧みさも光ります。
そこから自然に27インチモデルへ移行する流れができており、使用者数が多い理由のひとつです。
- Pure Drive Lite:フレーム重量約270g、フェイス100平方インチ。トップ寄りのバランスで反発性能が高く、スイングスピードが不足する小学生にもボールを飛ばしてくれる。男子・女子ともに人気のある定番モデル。
- Pure Drive Super Lite:平均255gとさらに軽量化。特に小柄な女子やパワーに自信のない男子に最適。扱いやすさと操作性の高さで「初めての27インチ」として選ばれるケースも多い。


ピュアアエロ Lite
スピン性能を重視する選手に絶大な人気を誇るのが「ピュアアエロ」。ラファエル・ナダルが象徴的な存在ですが、U12のジュニアでも「スピンで相手を崩すテニス」を志向する子どもに選ばれる傾向があります。Liteは約270g前後と軽量で、男子トップ層を中心に人気急上昇。2023年のジャパンオープンでアルカラスが見せたような、スピンを活かした多彩な展開を夢見て選ぶ子が増えています。

ピュアストライク Lite
フラットドライブ主体で、コントロールと安定感を重視したいプレーヤー向けのシリーズ。ピュアドライブやピュアアエロに比べるとシェアは小さいものの、2024年の新作モデルは評価が高く、地味ながら確実にファンを獲得しています。バランスはニュートラルで「ブレにくさ」を武器にできるため、コーチが推奨するケースも少なくありません。

ヨネックス(YONEX)
バボラと並ぶ人気を誇る国産ブランド。日本メーカーならではの安心感に加え、プロツアーでの露出も多く、ジュニアにとっては憧れの存在です。特に「EZONE」シリーズの軽量モデルは鉄板で、「100L」「100SL」「98L」は会場でも必ず目にするレベル。さらにスピン特化の「VCORE」も着実に使用者を増やしています。素材設計において柔らかさや衝撃吸収性も重視しているため、怪我を避けたい保護者からの信頼も厚いです。
EZONE 100L、100SL
100Lは285g、フェイス100平方インチ。パワーとコントロールのバランスに優れ、男女ともにU12層で最も使用率が高いモデル。男子トップ層にも女子上位層にも幅広く選ばれており、長く使える万能型。
100SLは270gで100Lよりさらに軽量化されたモデル。小学生女子や小柄な男子に適し、27インチへの移行段階で安心して試合に臨める一本。軽いためフォーム作りにも適しています。


EZONE 98L
285g、フェイス98平方インチ。よりシャープな打感を求める選手に人気。男子のトップ層で、中学以降に本格的な98モデルを使うことを見据えて選ばれることも多い。

VCORE 100L
スピン性能を重視したい選手に好まれるシリーズ。100Lは280g前後で、回転量を増やしてラリーで優位に立ちたい選手に向く。女子や小柄な男子が「スピン型スタイル」を取り入れる際に最適。

ウィルソン(Wilson)
バボラやヨネックスほどのジュニアのシェアはありませんが、一定の存在感を持つのがウィルソンです。
日本国内のジュニア大会を見渡すと、使用率は少数派にとどまるものの、特徴あるモデルが揃っており「Wilson派」を選ぶ家庭やコーチは確実に増えています。特に最近はプロ大会での露出戦略が「Ultra」シリーズに偏っており、ジャパンオープンなどでもUltraの広告展開が目立っています。
2025年11月に初開催されるNEXT HERO TOURでもU10からの有望選手獲得を意図したものであり、今後シェア拡大が期待されます。
Ultra 100L / Ultra 100UL
ウィルソンの主力としてプロ・アマ問わず広く展開しているUltraシリーズ。
- Ultra 100L(280g):反発力と操作性を兼ね備え、ストローク主体のジュニアに適する。
- Ultra 100UL(260g):非常に軽量で、非力な小学生や女子にフィット。初めての27インチとしても選びやすい。


Clash 100L / Clash 108
Clashシリーズは、柔らかい打球感と高いフレックス性が特徴。腕や肘に優しく、ケガを避けたいジュニア層の支持があります。
- Clash 100L(280g):柔らかい打球感で、成長期のフォーム習得にも向く。
- Clash 108(280g、フェイス108平方インチ):フェイスが大きくスイートスポットが広いため、打ち負けにくい安心感がある。女子や初心者寄りの層に好まれる。


プリンス(Prince)
国内では一時代を築いたブランドで、現在も一定のシェアを維持しています。特に「BEAST」シリーズはジュニアにも浸透しており、会場で見かける機会は少なくありません。
- BEAST 100(280g):操作性とコントロール性能のバランスに優れる。男子女子問わず中堅層に支持される。
- BEAST O3 104(280g):フェイス104平方インチと広め。スイートスポットの広さが安心感につながり、初めての27インチにもおすすめ。
- Ripcord 100:エントリー層向けの軽量モデル。操作性重視で、試合経験の浅い子どもに最適。

ヘッド(HEAD)
世界的にはトッププロも多く使用するHEADですが、日本のジュニア層にも力を入れており、一定のシェアを堅持。
「Speed」「Radical」「Instinct」など人気シリーズに軽量モデルが用意されており、着実に使用者を増やしています。
- Radical Team L 2025(260g):2025年モデルの新作。操作性を高めた設計で、打ち負けない軽量ラケット。
- Instinct Team L(270g):オールラウンド性能で安心感がある。
- Speed MP L(280g)/Speed Team(285g)/Speed Team L(265g)/Speed PWR(255g):Speedシリーズは選択肢が豊富で、スピン系からオーバーサイズまで幅広く揃うのが魅力。特にTeam LやPWRは「とにかく軽く、楽に飛ばしたい」ジュニア層に人気。
- PWR 110(265g):オーバーサイズ系で非力な選手におすすめ。

ミズノ(Mizuno)
国内ブランドで、特にBOOSTERシリーズにライトモデルが追加され注目を集めています。国産ならではの安心感を重視する層や、ミズノ契約校の子どもを中心に少しずつシェアを広げています。270gの「Booster LITE」は、扱いやすさと飛びを兼ね備えた新定番候補です。

テクニファイバー(Tecnifibre) / ダンロップ(Dunlop)
どちらもシェアは大きくありませんが、競技志向のジュニアが「次のステップ」を見据えて選ぶブランド。
- Tecnifibre T-Fight 280 ISOFLEX(280g):打感のクリアさと扱いやすさで、早めに競技指向を固めたい子に選ばれる。
- Dunlop CX 200 LS(290g)/FX 500 LS(285g):高校・大学での移行を見据えた「本格派の入り口」として利用されるケースが多い。
27インチラケット比較表(概ね285g以下モデルのスペック)
項目 | Babolat Pure Drive Lite | Babolat Pure Drive Super Lite | Babolat Pure Aero Lite | Babolat Pure Strike Lite | Yonex EZONE 100L | Yonex EZONE 100SL | Yonex EZONE 98L | Yonex VCORE 100L | Wilson Clash 100L (v2) | Wilson Clash 108 (v2) | Wilson Ultra 100L v4 | Wilson Ultra 100UL v4 | Prince BEAST 100 (280g) | Prince BEAST O3 104 | Prince Ripcord 100 | HEAD Radical Team L | HEAD PWR 110 | HEAD Instinct Team L | HEAD Speed MP L | HEAD Speed Team | HEAD Speed Team L | HEAD Speed PWR | Mizuno Booster LITE | Tecnifibre T-Fight 280 ISOFLEX | Dunlop CX 200 LS | Dunlop FX 500 LS |
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重さ(unstrung) | 270g | 255g | 270g | 265g | 285g | 270g | 285g | 280g | 280g | 280g | 280g | 260g | 280g | 280g | — | 260g | 265g | 270g | 280g | 285g | 265g | 255g | 270g | 280g | 290g | 285g |
フェイスサイズ | 100 in² | 100 in² | 100 in² | 100 in² | 100 in² | 100 in² | 98 in² | 100 in² | 100 in² | 108 in² | 100 in² | 100 in² | 100 in² | 104 in² | 100 in² | 102 in² | 110 in² | 100 in² | 100 in² | 100 in² | 100 in² | 115 in² | 100 in² | 100 in² | 98 in² | 100 in² |
長さ | 27 in | 27 in | 27 in | 27 in | 27 in | 27 in | 27 in | 27 in | 27 in | 27.25 in | 27 in | 27 in | 27 in | 27 in | 27 in | 27 in | 27 in | 27 in | 27 in | 27 in | 27 in | 27.4 in | 27 in | 27 in | 27 in | 27 in |
バランス(unstrung) | 330 mm | 330 mm | 330 mm | 330 mm | 325 mm | 330 mm | 330 mm | 330 mm | 315 mm | 335 mm | 320 mm | 330 mm | 330 mm | 335 mm | — | 335 mm | 345 mm | 335 mm | 325 mm | 320 mm | 340 mm | 345 mm | 325 mm | 330 mm | 325 mm | 325 mm |
ストリングパターン | 16×19 | 16×19 | 16×19 | 16×19 | 16×19 | 16×18 | 16×19 | 16×19 | 16×19 | 16×19 | 16×19 | 16×19 | 16×19 | 16×19 | 16×19 | 16×19 | 16×19 | 16×19 | 16×19 | 16×19 | 16×19 | 16×19 | 16×19 | 16×19 | 16×19 | 16×19 |
型番 | 101555 | 101556 | 101449 | 101485 | 07EZ100L | 07EZ100SL | 07EZ98L | 07VC100L | WR074011U | WR074210U | WR108711U | WR108811U | 7TJ157 | 7TJ158 | — | 233932 | 233932 | 236121 | 236044 | 236045 | 236046 | 236047 | 63JTN853 | 14FI280I | 103266 | 103267 |
まとめ:ジュニア層のラケット選びにおけるポイント
- 使用率データでは、上位公式戦、公認大会ともにバボラとヨネックスで概ね過半数の傾向。
- 選手は260g前後の過渡期を経て早期に27インチへ移行する傾向。280g前後が主流。
- 無理に27に移行せず、身長にあったサイズのラケットで、振り切れることを第一に考える
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