ジュニアテニス選手が一度は直面するのが、ガットの「ナイロンがいいの?ポリがいいの?」という問題。
最近は大会会場を見渡しても、上位の子は ポリ(ポリエステル) を使うケースが多いのが実情です。
ただ、実際の U12 の母数で言えば、ナイロン使用が圧倒的多数で、上位層・競技層はポリという二分構造が生まれています。
では、なぜこのような差が出るのか。
そもそもナイロンとポリは何が違うのか。
それぞれゲージはどうなのか。
そして U12ではどちらが“正解”に近いのか。
ガットとはテニスのストリングのこと、ゲージとは、ガットの太さのことを言います。
今回は、メーカーの実測データ、スポーツ工学(ラフバラ大学)、ジュニアの身体発達、競技レベルの違い、ゲージ(1.25 / 1.30)の影響も踏まえて整理します。基本から整理してお話しします。
ガット素材:ナイロンとポリの比較
ガットの議論が混乱する理由は、ナイロンとポリを「同じ土俵の違い」だと思ってしまうから です。実際には、
素材の性質が全く違う“別の道具”と言って良いほど差があります。
【比較表】ナイロン vs ポリ(U12視点)
| 性能 | ナイロン | ポリエステル(ポリ) |
|---|---|---|
| 反発性(飛び) | 非常に高い。軽い力で飛ぶ | 低い。自分の力で振らないと飛ばない |
| 柔らかさ | 最も柔らかい | 硬い。衝撃が強い |
| スピン性能 | 中程度 | 高い(スナップバックが大きい) |
| コントロール | 方向がブレやすい | 安定性が高い |
| 耐久性 | 切れやすい | 切れにくい(ただしヘタりやすい) |
| テンション維持 | 良い | 落ちやすい(特に初期) |
| 身体への負担 | 少ない | 大きい(成長期は注意) |
| 費用面 | 張り替え頻度多い | ガットは長持ちするが性能劣化は早い |
| U12との相性 | ◎(大多数がこれ) | △〜◯(競技層向け) |
この表を見ても分かるように、ナイロンは「やさしさ」、ポリは「性能」という性質がはっきり分かれます。
ナイロンは「柔らかさと飛び」、ポリは「スピンとコントロール」が強みです。
メーカー実測データが示す違い
バボラ・ルキシロン・ウィルソンが公開しているテスト結果を総合すると、
素材差は以下のように整理できます。
① ナイロンは「たわみ量」が大きい → 飛びやすい
ナイロンは衝撃でよく伸びるため、接触時間(dwell time)が長く、ボールを運んでくれます。
U12のようなパワー不足の年代には、「とにかく飛ばしやすい」というのが大きなメリット。
② ポリは「たわまない」→ 反発しない
メーカーの剛性データでは、ポリはナイロンより 15〜30% 硬いという結果があります。
ナイロンを“ウレタンシート”とするなら、ポリは“プラスチック板”のようなものです。当然、
力が弱い子には飛ばしにくい。
③ ポリは「摩擦が少ない」→ スナップバックが大きい
反面、ポリには大きな武器があります。
ルキシロンとウィルソンの公式発表では、ポリはナイロンよりストリング同士の滑りが良いという摩擦実験が公開されています。この“滑りやすさ”が、インパクト時のスナップバック量を増やし、回転量が大幅に増える という結果になります。
④ ポリはテンション維持が悪い(初期落ちが大きい)
バボラのテンションロス実測値でも、ポリは張ってから24時間以内に数kg落ちるというデータがあります。
ナイロンは比較的安定しています。この点も U12 には重要なポイント。
ポリは見た目は切れませんが、性能が“死ぬ”のが早いため、U12の場合は「3〜4週間」での張り替えが必要です。
スポーツ工学(ラフバラ大学)が示す「素材差の物理的根拠」
ラフバラ大学のストリング実験は、メーカーの実測データとよく一致しています。
ポイントは3つ。
① ポリは接触時間が短い
→ 衝撃が“ダイレクトに”手首・肘に来る
ナイロンはクッション性が高く、ボールとの接触時間が長いですが、ポリは硬いため接触時間が短く、衝撃が強い。
これが成長期の身体には注意すべきと言われる所以です。
② ナイロンはエネルギー吸収率が高い
→ 軽い力で飛ぶ
スイングスピードの低い U12 では、ナイロンの“たわみ”が飛距離を生みます。
③ ポリはスイング速度が高いほどメリットが増える
大学の研究でも、スイング速度が90km/hを超えるとポリのスナップバックが最大化する
という結果があります。
しかし U12は60〜80km/hのスイング帯の子が多く、この帯域ではナイロンが有利なケースが多いです。
ここがナイロンとポリの境目です。
なぜU12の大多数はナイロンなのか
理由は明確です。
① 飛ばすための筋力が足りない
ポリは飛ばない。U12のパワーでは“使いこなせない”子が多い。
ナイロンからポリに変えた直後、飛距離が落ちてフォームが小さくなったため、再びナイロンに戻したところ、
スイングが伸びてラリーが安定した事例もあります。
② 軽量ラケット×ポリは負担が大きい
ポリは痛み・故障リスクが増します。
③ 技術が安定しない時期は柔らかさが必要
ナイロンはミスヒットに寛容です。
④ 扱いやすいのでフォームづくりにも良い
ポリは“強く正確に振る技術”がないと性能が出ない。
だからこそ、U12全体の母数ではナイロンが圧倒的多数という結論になります。
では、なぜ「上位層はポリ」を好むのか?
こちらも理由は明確。
① スイングが速い(90〜120km/h帯)
ポリが“動く条件”を満たしている。
② ボールが重く、ナイロンでは制御しにくい
ナイロンだと飛びすぎ・浅すぎが起こる。
③ スピン量を求める戦術になっている
競技層ほど縦の変化を求める。
④ 練習量が多く、ナイロンではすぐ切れる
耐久性の問題でポリを選択せざるを得ない。
1週間を目安として、数日で切れるようではポリ推奨。
⑤ そもそも競技層は「使いこなす技術」がある
ポリは“扱える選手が使うもの”。
ナイロンとポリの「ゲージ差」(1.25 / 1.30)
ここからは、最初の画像の内容(太さの違い)を踏まえつつ、ナイロンとポリでのゲージ差の解釈を深堀します。
ナイロンの 1.25 / 1.30
● 1.25mm ナイロン
- 反発性が高く飛ぶ
- 柔らかい
- スピンがかかりやすい
- 切れやすい(耐久性は弱い)
→ U12では“クセが少なく扱いやすい”ゲージ。
● 1.30mm ナイロン
- 飛びは落ちる
- 打球感がしっかり
- 耐久性アップ
→ “週4〜5練習する子”や“強く振れる子”向け。
◆ ポリの 1.25 / 1.30、小学生は1.20も
● 1.25mm ポリ
- ポリの中では柔らかい
- たわむのでスナップバック最大化
- スピンがよくかかる
- ジュニアが扱いやすい唯一のポリゲージ
→ U12でポリを使うなら、ほぼこの選択。小学生は回転や反発を意識して1.20もあり。
● 1.30mm ポリ
- 硬い
- たわまない
- 飛ばない
- 衝撃が強い(痛みの原因になりやすい)
→ U12では基本的に“条件を満たした子だけ”が使うべき。
結論:U12は焦らずナイロンから。根拠なくポリは不要
上位層のみポリを検討するのが“最適解”でしょう。
ジュニアテニスのストリング選びは、素材そのものが性能を決めるため、“万人に正解はない”のが前提です。
が、それでも U12 の現場で見た現実 をまとめれば、 一般U12は ナイロンが圧倒的に相性が良いです((飛ぶ・柔らかい・痛めない・扱いやすい・技術の成長に寄与)。一方で、選手上位層/競技層は ポリ(基本は1.25mm)で性能を最大化できるでしょう(スピン・コントロール・球威を支える)。
正しいフォームでないと腕を痛めます。十分なスイングスピード、コーチとの相談をもってポリに変更することをお勧めします。
【参考文献】
Babolat Official – String Technologies
Wilson Labs – String Performance Data
Luxilon Technical Information
Loughborough University: Tennis Racket & String Physics Research
ITF Technical Centre – String Performance Database
USRSA String Selector & RSI Magazine
Tennis Warehouse University (TWU): String Performance Tests


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