ジュニアテニス選手の高校卒業後の進路

ジュニアテニスに取り組む小学生以下の子供達、微笑ましく「将来はプロになりたい!」と抱負を語ってくれます。

実際は多く、いやほとんどの選手が「この先どうなるんだろう」という疑問にぶつかります。
小学生は軽いつもりで始めた「ご家庭」も多いはず。ご家庭と書いたのは、小学生以下の場合、テニスを始めるきっかけや、選手として頑張る環境を与える保護者の存在が必要になるからです。
保護者目線では、小学生という自分自身の将来を正しく判断しがたい年代でレールを敷いてしまうことにもなるので、極めて難しい判断です。小学生のうちは好きなことをやらせてあげたい、という方針のご家庭も多いと思いますが、熱くなりすぎて家族でテニス過多になりすぎると、小学校卒業時に、勉強の仕方がわからない、学業が興味がない子になってしまうリスクもあります。

小学・中学の頃は、目の前の大会に集中できても、高校生活後半あたりに差しかかると、テニスの強さそのものだけではなく、進路という現実的なテーマを避けて通れません。
多くのスクールで「学業」や「進路」を重視しているのは、テニスを頑張る子にこの問題がいずれ生じるからで、
テニスを頑張り続けた子たちのその後も考えているスクールは良いスクールと言えるでしょう。

では、実際にジュニアテニスを頑張ってきた子たちは、卒業後どんな道へ進むのでしょうか。
残念ながら、日本では「ジュニアテニス経験者の進路」を網羅的に追跡したデータが存在せず、公式統計として明確な割合が出ているわけではありません。それでも、いくつかの客観的データを組み合わせることで 現実的な目安を示すことは可能です。本記事では推定レンジを参考に、ジュニアテニスの「卒業後」を示したいと思います。

目次

大学(短大含む)進学率は62.3%(令和6年3月データ)

子供の数は減少中ですが、大学進学率は上昇中です。
高等教育機関(大学(学部)・短期大学(本科)入学者、高等専門学校への進学率は87.3%(前年比3.3%上昇)で、過去最高です。大学(学部)・短期大学(本科)進学率も62.3%で非常に高いですね。テニス選手達もこの割合と比例していくこととなります。高校卒業とともに就職するのは少数派で、よく見る若いテニスコーチの多くは数年で入れ替わりますが、多くは学生アルバイトです。

最終的にプロの世界に進むのは、ごくわずか

子どもたちが頑張っている姿を見ていると、「もしかしたらプロを目指せるのでは」と期待がふくらむ瞬間があります。しかし実際には、全国上位に食い込むような選手であっても、プロの世界にたどり着く割合は1%に満たないというのが現実です。

国際大会(ITF・チャレンジャー等)でポイントを取り、ランキングがつくプロは、毎年10名に満たない人数ですから、どのように計算しても上記のような低い数字となります。

国際ジュニア(World Junior Tennis Finals)に出場するような世界的上位層を対象にした研究でも、成人カテゴリーに進めたのは62%で、その中でもプロとして本格的に活動できたのはさらに限られた一部に過ぎません。世界のトップジュニアですらこの難易度なのですから、上記数字はむしろ現実的といえます。
プロになるには実力は当然として、財政的支援・コーチング環境・海外遠征の量など、複数の要素を揃えられるかどうかがカギになります。

国内大学へ進学(体育会テニス部へ)

最もイメージしやすい進路が、国内大学の体育会テニス部への進学です。関東大学リーグを筆頭に、全国の大学に一定の競技環境が整っており、強豪校の1部・2部だけでもレベルの高い選手が揃っています。

ただし、全国の競技ジュニア人口と比べると、大学体育会で活動できる枠は決して広くありません。高校競技者全体を母集団にすると、体育会に進む層はだいたい1割ほど。関東ジュニア出場歴や全国大会での戦績など、ある程度の実績が求められるため、ここへ進む子たちは“高校までの競技成果がしっかり残った層”だといえます。

また大学の体育会は、中学・高校とは比べ物にならないほど練習量も競争もハードになります。入部できるかどうか以上に、四年間競技を続ける覚悟があるかが問われる場所でもあります。最近の大学は昔と違ってしっかり学ぶ場となっていますが、やりたいことが事由にできる場でもあります。部活動を選択するということは、高校時と同様にテニス漬けの日々を最後まで過ごすこととなります。

この先には実業団、プロという道もありますし、その後の道は多彩です。
就職にしても、大学の部活動出身者は同じ大学のその他一般より有利に運ぶことが多く、更に売り手市場ですので、良い就職先に進む方が多いです。


国内大学へ進学(テニスサークル・引退)

競技としてのテニスは一区切りつけるけれど、テニスそのものは好きだから続けたいという層が、非常に多いです。

全国大会の常連校にいた選手や、地域でトップ走者だった選手でも、大学ではサークルを選ぶケースは珍しくありません。学業や留学、インターンなど、大学生活でやりたいことが増えると競技の重さに縛られたくないと考えるのはごくごく自然です。テニスそのものが好きだからこそ、もっと自由に楽しみたい選択肢もあります。

この層も、高校まで競技として頑張った経験が大学生活にも良い意味で影響します。
練習を通じて培った体力・人間関係スキル・時間管理能力など、サークル生活や学業でも活きてきます。

国内大学進学と同時にテニスを引退

ここも多いですね。
高校までしっかり握ってきた子でも、大学での進路決定段階でもう競技は十分と区切りをつける場合も多いです。

理由は人それぞれで、直前の受験勉強に集中するため、入学後にやりたいことができた、資格試験に没頭、怪我が長引いたため、などなど理由は様々です。「ここで燃え尽きた」と感じる子もよく聞きますね。
ジュニア期はどうしても子どもと親が一緒に努力していることが多い(送迎・資金面)ですが、大学進学後は環境が変わり、本当に自分の足で考えた時、一度テニスから離れるという判断はごく自然です。

海外大学へ進学

数年前までは珍しかった海外大学テニス留学ですが、ここ数年で一気に増えてきました。奨学金も充実しており、国内では評価されにくいランキングでも技術とポテンシャルを評価されやすい傾向があります。

進路の多様化に伴い、今後も少しずつ増加していくと予想します。

海外大学のテニス環境は、日本とは全く別物です。トレーニング体制が整い、試合数も多く、競技レベルも多層的で、学問とテニスをバランスよく続けられる魅力があります。英語力のハードルこそありますが、実はテニスの実績よりも主体的に挑戦したい意思が大事になる進路でもあります。

その他の進路:専門学校・一般就職・実業団・テニスコーチ

その他進路は多岐にわたります。

専門学校では、医療系や美容、スポーツビジネスなど明確な将来像を持った子が進むケースが見られます。テニスを通じて身体の使い方やスポーツに興味をもったことが、次の学びにつながることもあります。

近年は大学進学率が上がっていますが、高校卒業後に一般就職する子も多く、これは競技引退の自然な形です。
ただ、テニス経験者は社会人になってから“戻りやすい”という特徴もあります。ショットの感覚が残っているため、スクールに通う、仲間とダブルスをするなど、テニスを趣味として続ける子は少なくありません。

実業団という選択肢もありますし、テニスコーチとして働く道もあります。大学生のアルバイトとしてコーチを始め、卒業後もそのまま職業にする子もいます。テニスが好きで、人に教えることに喜びを感じられるタイプに向いている仕事です。

参考文献
Stare, M. et al. (2024). Junior to senior transition of male elite junior tennis players. PLOS ONE.
Reid, M., & Morris, C. (2016). Tennis player development: From junior to professional transition stage.
スポーツ庁(2023)「アスリートのキャリアに関する実態調査」。
近畿大学(2020)「日本男子大学生テニス選手の現状と課題」。
Sato, Y. et al. (2024). Factors that enable breakthroughs in tennis: A case study of elite college tennis players in Japan.
奈良教育大学(2012)「学生スポーツ選手の競技引退に関する一考察」。
Lipscomb, S. (2007), Stevenson, B. (2010) ほか、スポーツ参加と教育成果に関する研究。
Allen, N., & Vella, S. (2022). Adolescent sport participation and academic performance: A systematic review.
文部科学省「学校基本調査」(高等学校卒業後の進路)。

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