2026年4月下旬よりリリースしたヨネックスの新作ラケットMUSE、打つ機会があり、ちょっと良いなと思いましたのでご紹介します。これまでのシリーズとは少し違う立ち位置のラケットです。
ヨネックスはご存じの通り、分かりやすく特徴が分かれるブランドです。
特にジュニアではEZONEは飛びの良さ、VCOREはスピン性能で両者が人気。
それぞれ武器がはっきりしていて、選びやすい反面、プレースタイルもある程度決まってきます。
その中でMUSEは、少し方向性が違います。
何か一つに尖っているというよりは、全体のバランスをかなり意識して作られている印象です。
丁度選抜、都県ジュニア、全小予選まで終えて、人気のラケットを使ってみたもののミスが目立ち、安定性、確実性に欠けていると感じた方は少し読んでいただきたいです。
MUSEは何の後継モデル?
新しいラケットが出ると、まず気になるのがこれは何の後継なのか?という点ですが、MUSEはそういった既存シリーズの後継ではありません。
EZONEの新作でもなければ、VCOREやPERCEPTの流れを引き継いだモデルでもなく、位置づけとしては完全に独立した新しいシリーズです。
とはいえ、その特徴はまったく別物でもありません。
実際に打ってみると、これまでのヨネックスのラケットで感じていた要素が、うまく組み合わさっている印象があります。
例えば、柔らかい打感やボールを持つ感覚は、PERCEPTに近いものがありますし、スイートエリアの広さや扱いやすさはEZONEを思わせる部分もあります。つまり、どれか一つの後継というよりは、これまでの良い部分を整理して、より扱いやすい形にまとめたラケットと見る方が自然です。
ではなぜ、あえて新しいシリーズとして出してきたのか。
ここが少し面白いところで、現在のヨネックスはそれぞれのシリーズの役割をかなり明確にしています。
EZONEはパワー、VCOREはスピン、PERCEPTはコントロール。
それぞれ性能の方向性がはっきりしている一方で、そのどれにも当てはまらないプレーヤーが一定数いるのも事実です。特にジュニアの移行期では、まだそこまで振り切れないけど、もう少し上のレベルのボールを打ちたいという状態になりやすい。
MUSEは、まさにそのゾーンに合ったラケットです。
強い武器を持つというよりも、プレー全体を安定させることに重点が置かれています。
U12、U14の上位層(関東~全国)の試合を見て頂けるとわかりますが、ミスをしない選手は当然に強い。
強くバコッて決められる選手は当然強いのですが、それが強みではない選手が真似をしても上手くいきません。
ラオウの剛に対してトキの柔、みたいなもので、剛は、使いこなしてこそです(古くてすみません)。
MUSEの特徴

実際に打ってみるとまず感じるのは、打球感の柔らかさです。
ボールを弾くというより、一瞬持ってから押し出すような感覚があります。
この感覚があることで、多少打点がズレてもコントロールが大きく崩れません。
ジュニアの場合、毎回同じ打点で打てるわけではないので、このズレを許してくれる感じはかなり大きいです。
もう一つ特徴的なのが、無理に力を入れなくてもボールがしっかり飛ぶところです。
軽く振っても深さが出るのに、強く振っても暴れにくい。このちょうどいい飛び方が、ラリーの安定につながります。
結果としてどうなるかというと、ミスが減るというよりミスの質が変わる印象です。
極端なアウトやネットが減って、多少甘くてもコートに収まる。
ジュニアの試合では、この違いがそのままポイント差になることも少なくありません。
シンクロフレーム設計:フレーム全体で性能を揃える構造(新コンセプト)
今回のMUSEで最も特徴的なのが、このシンクロフレームという考え方です。
これはEZONEやVCOREにも部分的に存在する技術を組み合わせながらも、思想としては完全に新しい方向です。
従来のシリーズは、パワーやスピンといった“特定の性能を最大化する”設計が中心でした。フレームのどこでどう反発させるか、どこで回転をかけるか、といった点に重きが置かれています。
一方でシンクロフレームは、その逆の発想です。
どこで打っても挙動を揃えること、スイングの変化に対して反応を安定させることを目的としています。
つまり、性能を上げるのではなくバラつきを減らすことを意図しています。これはEZONEやVCOREにはなかったアプローチで、MUSEの核になる完全な新コンセプトと言えます。ジュニア的に見ると、ミスを減らすというより、ミスが大きくならないという方向の設計です。
アイソメトリック形状:ヨネックス共通の安定要素(共通技術)

アイソメトリック形状は、ヨネックスのほぼ全シリーズに採用されている基本技術です。
EZONEでもVCOREでも使われており、MUSE特有のものではありません。
ただし、MUSEではこの形状の“使い方”が少し違います。
EZONEでは反発を引き出すためのベースとして、VCOREではスピンをかけるための土台として機能しています。
それに対してMUSEでは、当たり損ねても成立するための保険としての役割が強くなっています。
同じ形状でも目的が違うというのがポイントで、技術自体は共通で、使い方が違います。
ジュニア的に言えば、ちゃんと当てるためではなく外れても大丈夫にするための設計です。
ユニフォーム・インパクト・グロメット:打感を揃える新アプローチ(新寄り)

グロメット構造自体はこれまでも存在していましたが、この均一化にここまで振った設計はやや新しい方向です。EZONEやVCOREでもストリングの動きを調整する技術はありますが、それは主に反発やスピンを引き出す目的でした。
MUSEでは発想が少し違っていて、どこに当たっても感覚を揃えるという点にフォーカスしています。
これによって、プレーヤー側の調整が減ります。芯に当たったときと外れたときの差が小さいため、毎回スイングを変える必要がなくなります。
この考え方は、シンクロフレームとセットで機能する新寄りの設計思想です。完全な新技術というよりは、目的の変化によって進化した要素と捉えると分かりやすいです。
エナジー・フロー・シャフト:しなりを活かした設計(共通+最適化)

シャフトのしなりを使う考え方自体は、PERCEPT(旧VCORE PRO)などにも通じるヨネックスの伝統的な要素です。
硬さだけで飛ばすのではなく、しなりでエネルギーを伝える設計ですね。
ただしMUSEでは、そのしなり方が少し調整されています。
PERCEPTほど柔らかすぎず、EZONEほど弾きすぎない。
結果として、力を入れなくても飛ぶが、コントロールは効くバランスに仕上がっています。つまりこの部分は、既存技術の延長線上にあるが、MUSE用にチューニングされた要素と言って良いでしょう。
ジュニア的に見ると、無理に振らなくても深さが出るという点でかなり恩恵が大きいです。
他の人気モデルとの違い:ラケット性能比較(ジュニア目線)
ラケット選びで迷うのは、やはり他モデルとの比較です。
特に27インチに移行するタイミングでは、選択肢が一気に広がります。
| モデル | パワー | スピン | コントロール | 打感 | 操作性 | 向いているタイプ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| MUSE | 中 | 中 | 高 | 柔らかい | 高 | 安定重視・成長途中 |
| EZONE | 高 | 中 | 中 | 弾き系 | 中 | 飛ばしたい |
| VCORE | 中 | 高 | 中 | やや柔らか | 中 | スピン主体 |
| ピュアドライブ | 高 | 中 | 中 | やや硬い | 中 | パワー型 |
| ピュアアエロ | 中 | 高 | 中 | やや硬い | 中 | スピン特化 |
| ピュアストライク | 中 | 中 | 高 | やや硬め | 中 | フラット系 |
こうして見ると、MUSEは極端な特徴がない代わりに、バランスが良いことが分かります。
ピュアドライブやピュアアエロのように一撃で決める力は強くありませんが、その分コントロールしやすく、プレーが安定しやすいです。
27インチ移行期での選択:LかSLか
ジュニアで一番悩むのが、この27インチへの移行です。
25インチや26インチまでは、そこまで迷いません。体格や年齢である程度決まります。
ただ、27インチに上がった瞬間に状況が変わります。
どのモデルにしても、SLにするかLにするかという選択です。
SLは扱いやすく、振り抜きも良いので安心感があります。ラリーも続きやすいです。
ただ、試合になるとどうしてもボールが軽くなりやすく、押し込まれる場面が出てきます。
一方でLにすると、球威は出ます。
しっかり当たればいいボールが行きますが、その分ミスも増えます。
特に、まだ体ができていない段階だと、振り切れずにスイングが中途半端になることが多いです。
SLでは物足りないけど、Lはまだ難しいという状態はよく見られます。
これまでは、このどちらかを選ぶしかありませんでした。
MUSEは、この間を埋めるような存在と言えるでしょう。
軽く振ってもボールが伸びて、それでいて強く振っても暴れにくい。無理をしなくてもラリーが成立する感覚があります。ジュニアの成長過程では、「できること」と「やりたいこと」に差が出てくる時期があります。
もう少し強いボールを打ちたい。でも体が追いついていない。
MUSEは、そのズレを自然に繋いでくれるラケットです。
安定感とは何か
ジュニアテニスでは安定感という言葉をよく使います。
これはただ、単純にミスが少ないことではありません。
本当に大事なのは、同じスイングで同じ結果が出ることと、多少ズレても大きく崩れないことです。
この2つが揃って、初めて安定している状態になります。
難しいラケットを使うと、どうしてもスイングを調整する必要が出てきます。
当てにいったり、振りを小さくしたりすることで対応しようとすることがあり、結果として、違うスイングになり、不安定なフォームとなりがちです。
逆に、無理をしなくてもボールが返るラケットだと、スイングを変える必要がありません。
当たり前にボールが帰ってきて、打ち崩せない選手がいますよね?そこで我慢比べとなり、相対的にミスが多く勝てないケース。100回でも200回でも同じ動きを繰り返せるようになれば、それが安定につながります。
MUSEはこの崩れにくさを作りやすいラケットです。
多少ズレても収まるので、無理に調整しなくていい。結果としてフォームが安定しやすくなります。
ジュニアにとっての安定感は、入ることよりも、調子を崩さないことも重要です。
ここを支えてくれるラケットは、長い目で見ると大きな差になります。
どんなジュニアに合うのか
では、MUSEはどんな子に合うのか。
これはかなりはっきりしています。
まず、ミスが多い子です。
ただし、単に強く打ってアウトするだけでなく、打点が安定しなかったり、スイングが毎回ズレているタイプ。
こういう状態であれば、MUSEはかなり助けになります。
ラケットがある程度吸収してくれるので、プレーが落ち着いてきます。
一方で、すでにしっかり振れていて、回転もかかっていてコントロールも制御できている場合、少し物足りなく感じるかもしれません。この場合は、ピュア系の方が武器としては分かりやすいかもしれません。
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もう一つ相性がいいのが、ストロークに苦手意識がある子です。
ボールが浅くなったり、面が安定しなかったりして、ラリーが続かないタイプ。
MUSEは、この「りあえず返すという部分を助けてくれるので、多少ズレてもコートに収まりやすく、ラリーが続くようになります。ラリーが続くと、タイミングが合ってきて、自然と打点も安定してきます。これが本人の自信になり、相手にとってはプレッシャーとなります。この流れに入ると、ストロークは一気に良くなります。


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