テニス初心者は、ラケットのストリングに付いている小さなゴムが気になるでしょう。
これが振動止めです。振動止めとは、打球後にストリング(ガット)が発生させる高周波の振動や音を抑え、
打感や打球後の余韻を調整するための補助器具です。
入会直後、何も知らない状態であれば、買うのが常識かどうか気になるでしょう。
また、振動止めという名称から、肘に優しいイメージもついてきますよね。
この点、結論から言うと、ジュニアに振動止めは基本的に必要ありません。
ただし、状況によっては役立つこともあり、絶対に付けてはいけないという話でもありません。
このテーマは、単に道具の話ではなく、ジュニア期に何を大切にするかという育成の話でもあります。
今回は振動止めの役割から、なぜジュニアには不要と言われるのか、そして小学生上位でポリを使う場合の考え方まで、まとめて整理していきます。
振動止めの本当の役割
まず最初に整理しておきたいのは、振動止めが「何をしている道具なのか」です。
振動止めは、打球後にストリングが細かく震える高周波の振動や音を抑えるためのものです。
ボールを打った瞬間の衝撃そのものを和らげたり、ラケットが腕に与える負担を大きく減らしたりする道具ではありません。
よくある誤解として、「振動止めを付けると肘に優しい」「ケガを防げる」というイメージがありますが、肘や手首への影響は、ラケットの重さや硬さ、ガットの種類やテンション、そしてフォームのほうが圧倒的に重要です。
振動止めによって変わる本質は、ボールスピードや回転量ではなく、打った後に手に残る感覚や音です。
少しマイルドに感じたり、キーンという金属音が消えたりする。その変化をどう感じるかは個人差が大きいです。
人やモノによっては、過剰な飛びが抑えられると感じることもあります。
このように、振動止めは、性能を上げる道具でも、安全装置でもなく、感覚を微調整するための道具だと考えるのが一番しっくりきます。
なぜジュニアには「必要ない」と言われるのか
育成年代、特に小学生において振動止めが不要と言われる理由は、伝統的に二点あります。
一つ目は、感覚を育てる時期だからです。
小学生のジュニアは、打感や音、手に残る余韻といった情報を、頭で理解するというよりも、体で覚えていきます。
芯で当たった時の気持ちよさ、外した時の違和感、うまくいかなかった時の音の違い。こうした生のフィードバックが、そのまま上達の材料になります。
振動止めを付けると、これらの差が少し均されます。
悪い当たりの不快感も減りますが、同時に「良い当たり」と「そうでない当たり」の違いも分かりにくくなります。
味を見分ける舌と同様、感覚が多感な時期だからこそ、できるだけ多くの情報をそのまま受け取るほうが、長い目で見るとプラスになる。これが、ジュニア期に振動止めを積極的に勧めない一番の理由です。
二つ目は、安全面の効果が乏しいからです。
腕を守る目的で振動止めを付けるケースは多いのですが、実際にはその効果は限定的です。
ラケットが軽すぎないか、ガットが硬すぎないか、テンションが高すぎないか、フォームに無理がないか。
こうした点を見直すほうが、ケガ予防としてははるかに重要です。
それでも振動止めが役立つ場合
ここまで読むと、じゃあ振動止めは付けないほうがいいのか、と思われるかもしれません。
ただ、答えは単純な二択ではなく、振動止めが役立つ場面も、確かに存在します。
たとえば、音や振動に敏感で、打球時の感覚が気になってスイングが小さくなってしまう子。
試合になると緊張して体が硬くなり、「嫌な感覚」を避けようとして消極的になる子。
こうした繊細なタイプ、緊張しやすいジュニアにとっては、振動止めは不快なノイズを消してくれる存在になります。
ビーンという長く響く感触が、短くバシュ!に変わります。
付けることで安心して振れるようになり、本来のスイングが戻るなら、それは立派な使い方です。
振動止めもデザイン性を重視したものから機能性を重視したバータイプなど様々で、結果的にやや収まりがよくなり、飛びすぎを緩和させることもあります。
大切なのは、「付けるか、付けないか」ではなく、様々な種類の振動止めと本人の相性によってプレーがどう変わるかを観察することでしょう。もともとガットの相性が実は悪くて(気づけていない)、その欠点を補ってくれることもありえます。
小学生上位 × ポリ使用の場合の考え方
ここからは、もう一段踏み込んだ話になります。
最近では、小学生上位層になるとポリエステルガット(いわゆるポリ)を使う選手が珍しくありません。
結論付けますが、2026年1月現在、関東に出るような上位層ではポリの方が多い点は間違いありません。
球速や回転量が上がり、ナイロンだと収まりが悪くなる。その現実的な理由から、競技的には理解できる選択です。
ただし、この場合に注意したいのは、ポリを使っているから振動止めを付けたほうが安全という考え方は成り立ちません。
ポリの負担の正体は、打球後の細かい振動ではなく、インパクト時の硬さやストリング自体の剛性にあります。
振動止めを付けても、その本質はほとんど変わりません。
むしろ、小学生上位でポリを使う選手ほど、打感や面の感覚が非常に鋭く、振動止めによって感覚がぼやけることを嫌うケースも多いです。タッチショットやコントロールショットの感覚を大切にする段階では、振動止めは不要と感じる選手のほうが多い印象です。
このゾーンで本当に優先すべきなのは、振動止めではなく、ポリの使い方そのものでしょうね。
テンションが高すぎないか、張り替え頻度が適切か、ラケットが軽すぎないか。
必要であれば、ハイブリッドにするなど、根本的な調整を考えるべき段階です。
それでも、試合の緊張感が強く、打感の硬さがメンタルに影響している場合には、比較検討する程度でしょう。
ただしそれは、安全対策ではなく、あくまで感覚と心理の微調整です。
このように、振動止めは、付けるか付けないかで上達が決まる道具ではありません。
ジュニア期においては、原則として不要であり、感覚を育てるという観点では、付けないほうが情報量は多くなります。一方で、緊張しやすい子、感覚が過敏すぎる子にとっては、プレーを成立させるための助けになることもあります。
精神衛生上の観点から、ある時とない時の、調子の善し悪しで必要性を判断すると良いでしょう。


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