全米オープンでルールを考えるにあたり面白いニュースがありましたのでご紹介します。
事例:セカンドサービス中の妨害、ファーストからやり直しでトラブル
本日8月25日、全米オープンのニュースが目に入りました。
【全米OP】試合中のカメラマン乱入から場内騒然!ブーイングやまずフルセット突入も元世界1位が初戦敗退(Yahoo!ニュース)
こちらは、全米オープン初日にメドベージェフ対ボンジ戦で異例の騒動です。
マッチポイント時、ファーストフォルトの後にカメラマンが誤ってコート侵入し、審判がセカンドでなくファーストサーブから再開を命じ、メドベージェフが激怒。試合は大荒れの末、ボンジがフルセットで勝利した、、、という内容。
これを見てまず感じたことは、ジュニア(小学生)の現場では、低学年にいくほどあまり浸透してないね、という点です。
そもそも、ルール上はどうなってるの?
まずは基本から。
ITFルール・オブ・テニス:Rule 23 “The Let”
サーブのモーションに入った後に妨害があった場合、 ファーストサービスからポイントをやり直しがルール上の原則です。 “モーション”というのは、テイクバックに入ったタイミングを指すと一般に認識されています。
つまり、ルール上は「セカンドサービスのモーションに入った後」であれば、妨害によりファーストから再開となります。これは、国際ルール(ITFルール)でも統一されています。
国際ルール(ITFルール・オブ・テニス)のRule 23(レット)では、妨害があった場合「そのポイント全体をやり直す」=ファーストサーブからとなります。世界的にはこのITFルール・オブ・テニス:Rule 23 “The Let”が原則です。
Rule 23 によれば、「レットが宣告された場合、セカンドサービスであっても(セカンドサービスレットでない限り)、ポイントはすべて再試合する」とされています。つまり、レットが発生すると、全ポイントはファーストサービスから繰り返すことが義務付けられています。
参考fiendatcourt.com+2thecourtsatcypresswaters.playbypoint.com+2
さらに、同記事中のケース・ディシジョンではこう述べられています
“When the ball is in play, another ball rolls onto court. A let is called. The server had previously served a fault. Is the server now entitled to a first service or second service?
Decision: First service. The whole point must be replayed.”
→ ポイントの途中(セカンドサービス開始後等)で妨害が生じ、レットが宣告された場合であっても、ファーストサービスからの再実施となります。国際テニス連盟+8fiendatcourt.com+8Alexis Akira Toda+8
“Take Two” の扱いに関する文化的・慣習的解釈
アメリカの USTA(全米テニス協会)のハンドブック「Friend at Court」における “The Code” では、レクリエーショナルな場面に限り、セカンドサービス途中で妨害が入った場合に慣例的に「ファーストサービスからのやり直し(Take Two)」を許すことがある、という柔軟な運用があります。これは“非公式の慣習的措置”であり、ITFルールとは異なるものです。fiendatcourt.com+2fiendatcourt.com+2
→つまり、レクリエーションの一環の試合では柔軟な対応があるものの、それ以外の試合ではファーストからやり直しという事を意味しています。
2. 日本テニス協会(JTA)の公式ルール
JTAは 「ルール・オブ・テニス(ITF版)」をそのまま採用 しています。
公式大会規程にも特別条項(例:セカンドサービス時のレットはセカンドからなど)はありません。
公式HPにも記載があります。
ルールQ&A

日本のジュニア大会ではどうなの?
で、問題はここです。
公式ルール上は…
日本テニス協会(JTA)もITFのルールをそのまま採用していますが、特段、ジュニア限定で変えている条項などはありません。このため、JTAのルールに則ることとなります。
実際のジュニア現場では…
でも、現場ではこうしたケース、意外と「セカンドからやり直し」になってることが散見されます。
ニュースではカメラマンですが、ボールが入ってきたときも同様です。このケースが一番多いですね。
知らないと、セカンドからにしてしまいがちです。
ジュニアの世界の多くはセルフジャッジですし、その他ロービング方式(巡回式)でもきちんと把握できていなかったり、コーチが流してしまったり、現場の慣習として「セカンドから」に定着してしまってたり。
この点、気をつけてほしいんです。海外遠征や国際大会では、間違いなく「ファーストから」。
ここで混乱が起きると、選手が戸惑うし、混線も起きかねません。
理解しておきたい事
ニュースで触れられた“セカンドサービス中の妨害はファーストから”というルールは、国際標準にもとづく正しい解釈です。
このニュースの場合、メドベージェフはカメラマンが入ってきて試合が止まった事に対してクレームを申し立てましたが、ファーストサーブから始めるルールは彼も当然に理解しています。ここの解釈は彼が正しいというわけではなく、
ルールに則ると言いがかりで、ファーストからが正しい対応でしょう。
日本のジュニア公式大会でも原則としては同じだけど、ジュニアのセルフジャッジの結果、「セカンドから再開される」ことは少なくありません。だからこそ、指導者も選手も「ルール上はファーストからやり直し」が正しいことを知っておいて、海外や大きな大会では慌てずに対応できるよう準備しておきたいですね。
ジュニアの試合では、声の強い方の言い分が勝つことがよくあります。
ファーストからとした場合、無知を理由に問題になることはよくあるでしょう。この場合、ITFルールの 23 “The Let”に書いてあると言ってやりましょう。知らない相手には話が通じないこともあり、やはり審判の仲裁は必要でしょう。審判が仲裁に来て万が一、もしセカンドからと言われた場合は、公式戦でない限りは揉めずにいったん引き下がるように指導しておくのも良いかもしれません。知らない人にその場で言っても仕方がない。
高校野球で球児が明らかなミスジャッジに対して審判に異議を申し立てるか否かと似ています。
後で調べてくださいとか笑顔で話しておくとスマートですね。
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