テニス界の新星として世界中から注目を浴びる世界ランキング一位のカルロス・アルカラス。
2025年9月、ジャパンオープンに初参加、初来日しました。私も観戦しに有明へ行きましたが、チケットも完売。
力強いプレイスタイルとギャップを感じるファンサービスに、日本のファンが急増中です。
しかし、華やかなの活躍以前には、地元クラブでの小さな一歩から始まる長い成長の物語がありました。
日本のジュニアでも参考になり、共感する部分が多々あると感じます。
本記事では、アルカラスの幼少期からジュニア期にかけての軌跡を追いつつ、成長の節目で見られた特徴やエピソードを紹介します。
幼少期(5〜8歳)―クラブに根付いた“ムルシアっ子”
アルカラスはスペイン南東部のムルシア地方にあるエル・パルマ地区の「Real Sociedad Club de Campo」でテニスを始めました。父親がクラブ運営に携わっていたこともあり、週末は家族総出でクラブに集う生活。「贅沢ではないが温かい」と本人が語るように、地域に根差した文化がテニス観の基礎を作りました。
父親でもあるカルロス・サントスは、幼少期からアルカラスの素質を見抜き、情熱を注ぎました。
「反応の速さ」「ボールを読む勘」に驚きつつも、子どもらしい集中の短さに手を焼いたといいます。スコアを忘れることもあった一方、技術習得は非常に早く、「一度見たらできてしまうタイプ」だったと証言されています。
アルカラスの幼少期のテニススクール↓
ジュニア前期(9〜12歳)―負けず嫌いと涙の時代

9歳頃からは幼少期から素質を見抜き、交流があったキコ・ナバーロが本格的に指導しました。
アルカラスは試合に負けると泣き止まないほどの負けず嫌いで、時にラケットを折ってしまうこともありました。その強烈な感情はコントロールが課題でしたが、同時に勝利への執念の表れでもありました。
一方で、父親はあえて練習現場に深く介入せず「親と指導者を混同させない」距離をとっていたといいます。日本でも保護者が技術的な指導について口を出すことを多くのコーチが嫌いますが、参考になる方針です。
このバランスが、感情の起伏を支えつつも、息子がコーチとしっかり向き合える環境を整えたと考えられます。
ジュニア後期(13〜15歳)―武器の整理とアカデミー移籍
この頃、アルカラスはすでに豊富なショットの引き出しを持っていました。特にドロップショットはフェレーロが「生まれつきの感覚」と評するほど自然で、ジュニア時代から多用していました。2025年9月のジャパンオープン(有明)決勝でもさこの頃、アルカラスはすでに豊富なショットの引き出しを持っていました。特にドロップショットはフェレーロが「生まれつきの感覚」と評するほど自然で、ジュニア時代から多用していました。
2025年9月のジャパンオープン(有明)決勝でも追い上げるフリッツに対し、最後のゲームでドロップショット3回。圧巻でしたが、その礎はこの頃から構築されていました。
課題は「いつ、どの場面で使うのか」。実戦での“武器の整理”が必要でした。ナバーロは「地元クラブの環境だけでは限界がある」と感じ、ビリェナにあるフアン・カルロス・フェレーロのアカデミー(Equelite)への移籍を勧めます。車で1時間以上の距離を、家族の支えで通い続けたことが、のちの飛躍につながりました。
転機(15歳)―フェレーロとの出会いと国際舞台

15歳の時、アルカラスはアカデミーで元世界1位のフェレーロと出会います。フェレーロは「彼にはすでに多くの才能が備わっていたが、整理が必要」と判断し、本格的に育成を始めました。
この年、オランダで初のITFジュニア優勝を果たし、スペイン国内だけでなくヨーロッパでも名前が知られる存在に。さらに、ビリェナでのイベントでは年上のシンネルを破った試合もあり、のちのライバル関係の序章となりました。
ユース期(16〜18歳)―プロへの助走

ジュニア後半からは、国内外の大会で常に年上の選手と戦うことが常態化。アルカラスは「2歳上の相手を倒してしまう」ケースが多く、同世代の枠に収まりきらない実力を示しました。
2018年にはジュニア・デビス杯でスペインを優勝に導くなど、国際舞台での経験も蓄積。ここで培った「チーム戦の経験」「プレッシャー下での勝負強さ」がプロ転向後のメンタリティに直結しています。
まとめ―ジュニア期に光る“完成前の原石”
アルカラスの成長物語を振り返ると、
- 幼少期はクラブ文化と家族の温かさ、早期からのテニス環境
- ジュニア前期は恵まれた環境下で、指導を受け入れる素直さと、負けず嫌いの感情爆発
- ジュニア後期は飛躍とともに、多彩な武器の整理
- 転機はフェレーロとの出会いと国際舞台
という流れで、段階的に「原石」が磨かれていったことが分かります。
現在の彼の強み――自由自在のショットセレクション、揺るがない勝負強さ、そして観客を惹きつける魅力――は、このジュニア時代の葛藤と学びの上に築かれているといってよいかもしれませんね。
参考:
El pequeño Alcaraz | Tenis | Deportes | EL PAÍS
Alcaraz, el precoz: de la anécdota con su primer técnico siendo infantil y jugando con cadetes a la conquista de las tres superficies con 21 años
Tenis – Real Sociedad Club de Campo Murcia
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