小学生の人口減少と、テニス人気拡大を阻む壁5点

小学生のテニス選手の保護者様は、長く続けていれば誰しも気づきますが、年々公認大会にエントリーする選手の数が減っています。今年伊達公子さんがTHE DIGESTの取材でテニス人気が相対的に下がっている懸念もされていましたが、直接的には子供が年々減少していることが大きな要因です。

今年(2025年)4月1日現在の子ども(15歳未満)の数は1366万人で、前年に比べて35万人減少しています。
子供の数は1982年(昭和57年)から44年連続で減少しており、過去最少を更新中です。

年齢階級別では、年齢の低い階層ほど見事に人口が減少し、下記の通り。

▼0-2歳:222万人(総人口に占める割合は1.8%、前年から13万人減・0.1ポイント減)
▼3-5歳:250万人(同2.0%、前年比7万人減・0.1ポイント減)
▼6-8歳:278万人(同2.3%、前年比10万人減・割合に増減なし)
▼9-11歳:302万人(同2.4%、前年比3万人減・0.1ポイント減)
▼12-14歳:314万人(同2.5%、前年比3万人減・0.1ポイント減)

このため、今後も「少子化が進行していく」ことは確実な未来です。
テニスをやり始める年齢は幼児以降ですから、0-2歳が222万人しかいないわずか数年後は、更に子供が減ることとなります。公認大会や公式戦が増える小学校高学年に相当する年代が302万人ですから、これから先、約10年かけて減り続け、25%相当母集団が減ります。ぞっとしますが、これは数字が示す事実です。

この減少をカバーするにはジュニアのテニス市場のパイを広げるしかありませんが、選手となると伝統的にいくつか壁が存在します。このままでは、テニススクールや現行の大会運営に影響を与える可能性もあり、関東視点・家庭目線ですが、現状の小学生ジュニアテニスの環境を巡る課題を整理しておきます。

今後のテニス業界を盛り上げるべく、批判的というわけではなく、テニス選手の親、家庭が認識している今後の課題として、前向きな解釈をしていただければと思います。

目次

移動距離

公認大会に出るようになると、毎週末、関東を飛び回ることとなります。
山梨、群馬、東京、神奈川、埼玉、千葉、茨城、栃木、、100キロ単位で行き来します。

ポイントを稼ぐ必要があるためで、たった1試合のために行くことも頻繁にあります。
負けたらそれで終わりで1~2時間で帰るのみ。試合会場に着いたら雨が降って雨天中止、ということもよくあります。

公認大会は公式戦ですから雰囲気はピリッとしているのは良い点もありますが、ドライとも言えます。

強ければ楽しいに直結しやすいですが、半数はそうはいきません。
結果が出なくても長く続いている家庭は、選手のみならず、親も移動が好きで運転が苦ではない、または子供のテニスに情熱を持つ親が多いです。

本来、お友達と遊んだり勉強できたものが、毎週末移動で奪われる、、、
合理的に考えた場合、これを理由に「心が折れる」話は昔からよく聞きます。

この結果、小学校高学年、または中学校進学後にこの螺旋から降りてしまう家庭は非常に多いです。

費用

上述の移動他、テニス選手の活動にはそれなりの費用が伴い、家庭の経済力も試されます。

まず車のガソリン代、高速料金、試合のエントリー費など。
これら、週に1回、平均100キロ移動として、諸々月に3~4万円程度。

また選手クラスは通常のジュニアクラスよりもスクール費用も高い。こちら月に3~6万円程度。
更に合宿、強くなってくると小学生にして海外遠征も出てきます。合宿は数万円から。海外遠征は場所によりますが100万円程度かかることもあります
最後にプライベートレッスン。これは地域差があり、1時間で5,000円程度で済むこともあれば、1万円超もごく普通。
極論、毎日プライベートレッスンであれば上達も早いですが、通常はスクールとプライベートを使い分けます。
全国に出るような選手でプライベートを全くしない選手は少数派です(選手クラスの環境によります)。

また、腕を上げて大きな大会に出ると、ほぼ帯同は必須です。
この際の帯同費用はスクールによって大きく異なりますが、通常はコーチの一日分の稼ぎを賄うイメージです。
交通費、宿泊費などの実費に加え、数万円程度かかります。

そして、小学生の間は練習時間とレベルがある程度相関するので、強くなるためには一定の費用をかける必要もあります。つまり、お金がないと不利なことがあります。

お金のことを考えずに子供の意向だけで選手クラスになると、強くなればなるほど周囲に裕福なご家庭が多いことに気づきます。この意識の差で愕然とすることも。

中学受験

幼児から小学校低学年にかけてテニスを始め、楽しくなって選手クラスへ移行、、
ここまではよくあるパターンです。しかし、伝統的に都心では中学受験熱が強く、クラスの過半数が受験するエリアも珍しくありません。
このため、小学校4~5年生あたりで塾との兼ね合いで選択に迫られ、徐々にフェイドアウトしていく子も多いです。

選手クラスだと週に4~5回練習をすることが普通で、練習時間も2~3時間となります。
このため、学校が終わってテニスの練習前後にできることは学校の宿題程度、ということも往々にしてあります。

勉強時間をとりすぎるとなかなか練習する時間がとれず、テニスばかりすると中学受験や学習の方が疎かとなり、、
両方重視すると寝不足です。どっちつかずになってしまうケースもあり、志望校に照らして戦略的に検討する必要があります。

学校休みを強制

多くのテニスの公式戦や大きな大会は、小学生の公式戦であるにもかかわらず、学校を休む前提であることが多いです。関東ジュニアも、石黒杯も、強化特訓も、ガールズカップも、海外遠征も。

時に公欠届という書面があったりしますが、これを認めるかどうかは学校次第で、昔からあったただの申請書にすぎません。

これら全て参加しようとすると、学校にはまともに来なくなります。
これらの大会は伝統的に、平日に来れない(学校をさぼれない)家庭を排除しています。

小学校は義務教育ですから、頻繁に休むことは学業の遅れに直結し、これを嫌う家庭は少なくありません。
これを許可しない学校も存在し、これについてはテニス協会は考慮していません。

学校を優先し、平日参加を避けた場合、様々な機会をロスします。上達する機会だけでなく、テニス継続のモチベーションも阻害します。ここを懸念していて、実際に大会への参加を断念したり、足が遠のいてしまった子もいます。

実名×画像×学校特定

ここ数十年で、子供に対する考え方は変わりました。
ネットリテラシーの教育が進み、子供の個人情報を開示するのはリスクと認識されつつありますが、テニスの世界では未だに「小学生大会」で通っている学校が原則全員開示されています。中学以降はともかく、小学生でここまで広く開示されるスポーツはあまり聞かないと認識しています。

そしてこのような大会に出る子は、他の大会にも出ていますので、名前を検索すると表彰された画像も出てきます。
通常のスクール大会の表彰では、画像、名前、所属チームまで開示されることが多いです。
つまり、これら民間大会ではぎりぎりの個人情報開示にとどめているつもりですが、別の公式戦で画像はなくとも名前と学校を開示してしまっています。

よって、お互い責任を負わないまま、ネット上ではいとも簡単に顔、名前、通っている学校、通っているスクールが全て不特定多数に特定されてしまいます。スクールはいつ通っているかわかりませんが、学校はいつも通っているわけで、住所も推定されてしまいます。

これをとても気にする家庭が多く、ようやく近年、個人情報をケアする団体、小学生大会で非開示を許容する都道府県も出てきました。例えば、スポ人はかつては表彰の画像でそれぞれ賞状をもち、どちらが誰か明示していたのですが、2023年から2024年にかけて、表彰の写真を2名とし、個人名を一緒に開示するのを辞めました。
万全とは言えませんが、このような配慮を考えようとすること自体、素晴らしいことかと思います。

この考え方はまだ過渡期で統一感がありませんが、確実に動き始めており、協会も個人情報の配慮を始めています。

まとめ

このように、ジュニアのテニス人気を本気で考えるならば、今の在り方と向き合う工夫は必要かもしれません。
思う所はありますが、直接話していますし、ネットで好き勝手話すのもどうかと思いますので、このあたりに。

あとは声の数かな。協会や団体も、まともな建設的な意見には耳を傾けてくれます。
これもテニス業界の特徴かな。もし皆様も賛同する点があれば、是非空気を読みつつ、発信頂ければ。

これから必ず子供が減る。テニス人気はできれば増やしたい。どうしたら良いでしょうね。

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